活性型第IX因子と第X因子の両方に結合するよう操作された抗体(バイスペシフィック抗体)であるACE910は、後天性血友病Aのin vitroモデルにおける検討で第VIII因子と同様の機能を発揮し、またin vivoモデルでは第VIII因子と同等の活性を持つことが示された。中外製薬と奈良県立医科大学小児科学の嶋緑倫氏らの研究結果で、12月7日からアトランタで開催されている第54回米国血液学会で、中外製薬富士御殿場研究所の北沢剛久氏が発表した。

 後天性血友病Aは、第VIII因子が欠乏して凝固反応が進まない遺伝性疾患。通常、第VIII因子は、活性型第IX因子と第X因子に同時に結合して活性化第IX因子による第X因子の活性化を促進し、血液凝固反応を促進する役割を持つ。そこで後天性血友病Aでは第VIII因子製剤の静脈投与が行われるが、投与した第VIII因子製剤に対する中和抗体が産生されてしまい、止血効果が阻害されることがある。

 そこで同グループは、抗体にある2つの抗原結合部位が違う抗原を認識するよう操作したバイスペシフィック抗体技術を応用し、活性型第IX因子と第X因子の両方に結合する抗体を作成した。この抗体を介して活性型第IX因子と第X因子が結合し、活性型第IX因子による第X因子の活性化を促進できると考えられる。また、第VIII因子製剤に対する中和抗体存在下でも活性型第IX因子による第X因子の活性化が阻害されないと考えられる。

 今回、同グループは、このACE910のin vitroでの第VIII因子様活性を評価するとともにin vivoにおける止血効果を検討した。

 まずin vitroでの検討として、第VIII因子欠損ヒト血清中において、中和抗体の有無にかかわらず、ACE910は活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を用量依存的に短縮させることが示された。また、第VIII因子を中和したカニクイザル血清中でもACE910は同様にAPTTを用量依存的に短縮させた。トロンビン生成試験法を用いて検討した結果、ACE910は第VIII因子欠損ヒト血清および第VIII因子を中和したカニクイザル血清のいずれにおいても、中和抗体の有無にかかわらずトロンビン生成を用量依存的に促進した。また、300〜1000nMのACE910は0.1 U/mLの第VIII因子と同等の活性があると考えられた。

 次にin vivoでの検討として、抗第VIII因子抗体を投与したのち人為的に出血させたカニクイザルに対し、ACE910(3mg/kgボーラス投与をday 0に1回のみ)もしくは組み換え第VIII因子(10 U/kgをday 0に1回、あとは1日2回)を投与し、初回投与後3日間の貧血、あざの面積を評価した結果、何も投与していないコントロール群に対してACE910はHb値の低下を抑制し、その抑制効果は組み換え第VIII因子と同等だった。あざの面積についてもコントロール群に対してACE910は有意に面積を減少させ、組み換え第VIII因子と同等の効果だった。

 ACE910の薬物動態を検討した結果、T1/2はおよそ3週間で、皮下注射のバイオアベイラビリティも100%近いと計算された。

 これらの結果から北沢氏は、ACE910は第VIII因子に対する中和抗体の存在の有無にかかわらず血液凝固を促進する活性を持ち、in vivoでの検討ではあるが、出血中の投与で止血活性が得られると期待されるとし、週1回の皮下注射でも第VIII因子の10%程度の止血効果が得られると期待されると締めくくった。