経口MEK1/2キナーゼ阻害剤AZD6244が、MAF遺伝子の発現亢進を伴う予後不良な多発性骨髄腫の治療に有効な可能性があるという、フェーズ2試験の中間解析の結果が示された。12月10日から13日まで米国サンディエゴで開催された第53回米国血液学会(ASH2011)で、米国National Cancer InstituteのAdriana Zingone氏が発表した。

 多発性骨髄腫は遺伝子発現プロファイルの特徴からいくつかのサブグループに分けられる。その中でも、t(4;14)転座を伴うMMSET/FGFR3サブグループと、t(14;16)、t(14,20)転座、8q24.3を伴うMAFサブグループは特に予後不良で、他のサブグループよりも無増悪生存期間、全生存期間ともに短いことが知られている。

 Zingone氏らのグループは、これまでの研究で、この2つのサブグループではいずれもMEKシグナル伝達経路が活性化しており、MAF癌遺伝子の過剰発現が起こっていることを突き止めた。さらに、MEKを阻害すると、MAFを発現する骨髄腫細胞のアポトーシスが誘導されることもわかった。Zingone氏らはこうした一連の知見をもとに、これらのサブグループの比率が高いと予想される再発性/難治性の患者におけるAZD6244の有効性を評価している。

 このフェーズ2多施設試験は、2回以上の治療歴のある再発性または難治性の多発性骨髄腫患者に対して、AZD6244の75mg1日2回投与を28日を1サイクルとして行うもの。現在37人が登録されており、うち12人が、AZD6244投与前と投与2日後に骨髄吸引生検による遺伝子検査を行うことに同意している。今回の中間解析では、遺伝子検査を実施したこの12人の患者における成績が示された。

 まず、遺伝子発現プロファイリングの結果、MAF遺伝子であるc-MAF、MAFB、MAFAの発現亢進が認められたのは12人のうちそれぞれ3人(25%)、6人(50%)、1人(8%)だった。また、MMSET転座(JH-MMSET hybrid)が1人で認められた。RAS変異は解析対象11人中5人(45%)、BRAF変異は11人中1人(9%)に存在した。

 遺伝子発現プロファイルと臨床転帰を併せて評価することができた8人のうち、MAF遺伝子の発現亢進を認めた6人中4人では、AZD6244によって安定状態(SD)以上の奏効が得られ(SDが3人、非常に良い部分寛解[VGPR]が1人)、奏効期間は5カ月〜13カ月の範囲だった。しかし残りの2人では進行(PD)のためにAZD6244投与が中止された。MAF遺伝子の発現亢進が認められなかった2例も進行(PD)のためにAZD6244投与が中止された。

 AZD6244投与前後の患者の遺伝子発現プロファイルの検討では、治療奏効例において、投与2日後にMAF遺伝子とその標的遺伝子(サイクリンD2など)の発現低下が認められた。また、MEKシグナル伝達経路の下流に位置するリン酸化ERK(pERK)、ppERKのレベルは、投与前は高レベルだったが投与2日後には劇的に減少した。一方、MAF発現亢進が認められなかった患者(非奏効例)では、ベースライン時から既にpERK、ppERKとも検出されなかった。

 Zingone氏は、以上の中間解析の結果から、「再発性または難治性の多発性骨髄腫のうち、MEKキナーゼ依存性でMAF発現亢進を伴う病型の患者では、AZD6244が有効な可能性がある。我々の検討の結果、このような患者では、AZD6244単剤で最長13カ月にわたる持続的奏効が得られる可能性があることが示された。この知見は、多発性骨髄腫患者の病型に応じた合理的薬剤開発の基礎になると考えている」と述べた。