筋層浸潤膀胱癌(MIBC)に対し、MVAC(メトトレキサート、ドキソルビシン、ビンブラスチン、シスプラチン)療法による術前補助化学療法(NAC)を行い、その後根治的膀胱摘除術(RC)を行った患者では、RCのみを行った患者と比べて全生存期間(OS)が延長したが、有意差には至らなかったことが、多施設共同、フェーズ3のランダム化試験(JCOG0209)の2回目の中間解析から示された。この試験では、無増悪生存期間(PFS)と病理学的腫瘍非残存割合(pT0)は有意に改善した。2月14日から16日まで米国オーランドで開催された2013 Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)で、札幌医科大学医学部泌尿器科学講座の北村寛氏が発表した。

 MIBCに対するシスプラチンベースのNACは、OSを5-8%延長すると考えられている一方、複数の試験では生存に対する有用性を証明することができていない。

 JCOG0209試験はJCOGに参加している28施設で行われた。この試験の目的は、MIBCで根治的膀胱摘除術を受けた患者において、MVAC療法によるNACの臨床的な有用性を評価することだった。主要評価項目はOS、副次的評価項目はPFS、手術合併症の割合、NAC施行中の有害事象、pT0、QOLだった。

 対象は、T2-4aN0M0の膀胱癌で、組織学的に尿路上皮癌と確認され、経尿道的腫瘍切除(TURBT)後8週以内、PS 0-1、化学療法や放射線療法の治療歴がない、20-75歳などの条件を満たす患者。患者は、根治的膀胱摘除術のみを行う群(RC群)、またはMVAC療法によるNACを2サイクル施行後、根治的膀胱摘除術を行う群(NAC群)に、ランダムに割り付けられた。MVAC療法は28日毎に行い、メトトレキサート30mg/m2を1、15、22日目に、ビンブラスチン3mg/m2を2、15、22日目に、ドキソルビシン30mg/m2とシスプラチン70mg/m2を2日目に投与した。

 2003年3月から2009年3月までに130人がランダム化された。当初は各群180人の登録が予定されていたが、症例の集積に時間を要し、患者登録は予定より早く終了された。NAC群64人、RC群66人となり、NAC群でNACを受けたのは56人、手術を受けたのは59人、RC群で手術を受けたのは65人だった。

 この試験は2012年9月に行われた2回目の中間解析において、データ安全性監視委員会(DSMC)から早期に結果を発表するよう勧告を受けた。臨床で広く行われているNACのレジメンはゲムシタビンとシスプラチンの併用のみであること、サンプルサイズの大きさから、NAC群のRC群に対する優越性を最終解析で確認するのは困難と判断されたことからだった。

 NAC群(64人)とRC群(66人)において、男性はそれぞれ57人と60人、年齢中央値はともに63歳、ECOG PS、病期の分布もバランスがとれていた。

 MVAC療法を受けた患者に多く発現したグレード3/4の有害事象は、好中球減少(87.3%)、食欲低下(28.6%)、悪心(21.4%)、発熱性好中球減少(17.9%)、貧血(14.3%)などだった。

 手術を受けたNAC群(59人)とRC群(65人)の患者では手術時間や出血量などに有意差はなく、また術中合併症の発生率にも有意差はなかった。

 術後早期合併症では、吻合部リーク(全グレード)はNAC群(12.1%)がRC群(1.5%)と比べて有意に多く、(p=0.0257)、リンパ漏出はRC群(12.3%)がNAC群(1.7%)と比べて有意に多かった(p=0.035)。その他の術後早期合併症と術後晩期合併症に有意差はなかった。

 残存腫瘍のpT0の割合はNAC群で有意に高く、37.3%となり、RC群では9.4%だった(p=0.0011)。また有意差はなかったが、リンパ節転移のpN0の割合もNAC群で高く、86.4%となり、RC群では68.8%だった(p=0.11)。

 主要評価項目であるOS中央値は、NAC群102カ月、RC群81カ月とNAC群で良好だったが、有意差には至らなかった(ハザード比0.65[multiplicity adjusted 99.99% CI:0.19-2.18]、p=0.07)。5年全生存率はそれぞれ72.3%と62.4%だった。

 PFS中央値は、NAC群99カ月、RC群78カ月で、NAC群で有意に改善した(ハザード比0.61[95% CI:0.35-1.06]、p=0.04)。5年無増悪生存率はそれぞれ69.1%と56.4%だった。

 北村氏は「この試験では、OSに有用な可能性が示されたSWOG-8710試験の結果が再現された。現在MIBCのNACとしてGC(ゲムシタビン、シスプラチン)療法が広く行われているが、MVAC療法も有望と考えられる」と話した。