Japan Study Group of Prostate Cancer(J-CaP)の前立腺癌患者に関するデータの検討から、限局性前立腺癌で内分泌療法を受けた日本人患者の転帰は、欧米の無作為化臨床試験(RCT)で根治的治療を受けた患者と同等であることが示された。2月2日から4日までサンフランシスコで開催されている2012 Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)で、京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野の樋之津史郎氏がJ-CaPを代表して発表した。

 日本泌尿器科学会によると、2000年に日本で限局性前立腺癌と診断された患者の45%は内分泌療法による治療を受けている。
 
 J-CaPは、日本人の前立腺癌患者に対する内分泌療法に焦点をあてた前立腺癌治療の実態調査を行い、治療の転帰を解析することを目的としており、2万人を超える患者のデータベースを有する。
 
 樋之津氏らはこのデータベースを用いて、限局性前立腺癌で内分泌療法を受けた患者の転帰を評価した。日本人患者の全生存率(OS)と補正生存率(cause-specific survival rates)を評価し、J-CaPの患者選択と同様の組み入れ基準・除外基準が設定された欧米の無作為化臨床試験(RCT)をPubMedで5件抽出し、転帰を比較した。
 
 J-CaPのデータベースでは、内分泌療法で治療を受けた前立腺癌患者は19275人で、このうち限局性前立腺癌患者は9127人だった。
 
 9127人全例が生検で診断を受け、2001年1月から2003年12月の間に内分泌療法を開始していた。初回の内分泌療法には、抗アンドロゲン単独療法、外科的去勢単独、LH-RHアゴニスト単独療法、LH-RHアゴニスト療法+短期抗アンドロゲン療法、外科的去勢+抗アンドロゲン療法、LH-RHアゴニスト療法+抗アンドロゲン療法が含まれた。
 
 D’Amicoリスク分類による評価では、低リスク群は1728人(19%)、中リスク群は1981人(22%)、高リスク群は5418人(59%)だった。
 
 追跡期間中央値2.9年(四分位数間領域:1.5〜5.3年)の後に推定された5年OSは、低リスク群、中リスク群、高リスク群でそれぞれ90.0%、87.2%、81.8%だった。5年補正生存率は、各群でそれぞれ99.4%、98.8%、93.2%となった。
 
 欧米のRCTとの比較の例を示すと、T3、T4、N0、Nx、M0、またはT2で前立腺特異抗原(PSA値)が40ng/mL超、またはT2でPSA値が20ng/mL超でGleasonスコアが8以上、80歳未満の患者の7年OSは、RCTで放射線療法と複合アンドロゲン遮断療法(CAB)を併用した患者(603人)で74%、J-CaP(2778人)で74.7%だった。
 
 T1、T2、N0M0、PSA値が50ng/mL未満の患者の8年OSは、RCTで根治的前立腺摘除術を受けた患者(349人)で82.1%、J-CaP(7687人)で77.7%だった。
 
 また、T1b、c、T2a、b、N0、Nx、M0、PSA値が20ng/mL未満の患者の10年OSは、RCTで放射線療法+短期抗アンドロゲン療法を受けた患者(987人)で62%、J-CaP(6211人)で74.6%だった。さらに低リスク群、中リスク群、高リスク群別にみると、RCTではそれぞれ67%、61%、53%、J-CaPでは75.1%、71.1%、75.8%となった。
 
 内分泌療法を受けた日本人患者と根治的前立腺摘除術や放射線療法を受けた欧米の患者の直接比較は困難であり、RCTの生存のデータとアウトカムスタディの結果の比較には慎重を要するが、一般的にRCTの転帰はアウトカムスタディよりも良好とされる。樋之津氏は、「今回の検討から、限局性前立腺癌で内分泌療法を受けた日本人患者の転帰は、欧米のRCTで根治的治療を受けた患者の転帰に劣らないと言える」と話した。