腎細胞癌(RCC)の転帰は多様であり、患者の約3分の1はステージIVに進行する。適切な全身療法を選択するためには根拠に基づいた指針が必要で、そのためにもバイオマーカーの確立が待たれる。米国Dana-Farber Cancer InstituteのToni K. Choueiri氏は、2月17日から19日にかけて米国オーランドで開催された2011 Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU)において、RCCの予後予測因子の開発の進展と展望を解説した。

 現在確立されている限局性RCCの予後因子にはTNM分類などの解剖学的な因子、Fuhrman nuclear gradeなどの組織学的な因子、症状などの臨床的な因子がある。これらの因子は単独で用いるよりも、複数の因子を組み合わせて正確に予後を予測するモデルとしてデザインされている。

 最近、予後予測遺伝子検査Oncotype DXと同じ技術を用いてRTqPCRで732個の遺伝子が評価され、16個の遺伝子発現がRCCの無再発の期間と強い相関を示すことが明らかにされた。この遺伝子群には、血管新生、免疫応答、細胞外マトリックス/細胞接着などに関与する遺伝子が含まれる。

 転移性RCC(mRCC)については、MSKCC (Memorial Sloan Kettering Cancer Center)リスク分類が、全生存期間(OS)の予測因子としてリスクカテゴリーを3段階(poor、intermediate、favorable)に層別化している。予後因子には、Karnofsky performance、ヘモグロビン値、補正カルシウム値、診断から治療までの期間、LDH値を用いている。

International Metastatic RCC Database Consortiumは、血管内皮成長因子(VEGF)を標的とする治療の全生存期間(OS)の新たな独立予測因子を見出すために、MSKCCリスク分類の要素を検証した。その結果、予測因子として、Karnofsky performanceが80未満、診断から治療までの期間が1年未満、貧血、高カルシウム血症、好中球増加症、血小板増加症をあげている。

 進行性RCCのバイオマーカーについては、現時点では臨床でルーチンに使用されるものは存在しない。複数の研究で、RCCの病理発生に重要なvon Hippel-Lindau(VHL)遺伝子の状態は、VEGFを標的とする治療の奏効に相関しないことが示された。

 一方、小規模の研究では、スニチニブで治療した淡明細胞癌のRCC患者において、治療前の癌に発現している低酸素誘導因子(HIF)-1、HIF-2が予測に役立つとの報告がある。

 興味深い因子の一つに、サイトカインのIL-2に対するバイオマーカーのcarbonic anhydrase XI(CAIX)がある。CAIXは、HIFとして知られる転写複合体を介して発現する酵素で、RCCのほとんどに発現するが、正常細胞には発現しない。
 
 Choueiri氏はこうした研究の現状を解説した後、今後の方向性として、生物試料のデータベースの構築、大規模なフェーズ3試験の一部としての組織の採取、そしてバイオマーカーをベースとする小規模試験を行うことで、「臨床にRCCのバイオマーカーを提供する機会を高めることができる」と語った。