米Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのB.I. Rini氏

 転移性腎細胞癌でスニチニブを投与し高血圧を発症した患者の臨床転帰は、高血圧を発症しなかった患者と比べて有意に改善され、高血圧が抗腫瘍活性のバイオマーカーとなる可能性がレトロスペクティブな解析から示された。成果は、3月5日から7日まで米サンフランシスコで開催された2010 Genitourinary Cancers SymposiumASCO GU2010)で、米Cleveland Clinic Taussig Cancer InstituteのB.I. Rini氏(写真)が発表した。

 高血圧は、血管内皮細胞成長因子(VEGF)の経路を標的とする血管新生阻害剤の投与に関連して発症することが多く、有効性のバイオマーカーとして提案されている。

 VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤のスニチニブは、進行性の腎細胞癌(RCC)の治療薬として世界的に承認されている。転移性腎細胞癌(mRCC)で未治療の患者にスニチニブを投与した場合、全てのグレードの高血圧が発生する割合は約30%だが、心臓の構造変化や心機能の変化には関連しない。

 Rini氏らはスニチニブで治療したmRCC患者において、高血圧の発症と抗腫瘍効果の判定、高血圧に関連する合併症の発生の関連を評価することを目的として、レトロスペクティブな解析を行った。

 スニチニブは50mgを1日1回で開始し、4週間連続投与され、その後2週間休薬し、これを6週間のサイクルとして繰り返す。

 今回の検討で高血圧の定義は、クリニックで測定した最大および平均の収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上であることとした。血圧測定は、各6週間の治療サイクルの1日目と28日目に行われた。

 有効性の解析の対象としたのは、過去の3件の臨床試験でmRCCに対しセカンドライン、ファーストラインの治療としてスニチニブを投与した544人。安全性の解析の対象にはもう1件の試験の4371人を試験に加え、4917人とした。いずれの試験でも63%以上が男性で、平均年齢は56〜62歳だった。

 544人中、442人(81%)に先に定義した収縮期高血圧が発症し、363人(67%)に拡張期高血圧が発症していた。高血圧を発症するまでの期間の中央値は、拡張期は1サイクル目(範囲;1-20)、収縮期は2サイクル目(範囲;1-19)だった。高血圧を発症した患者の血圧の中央値は160.0mmHg/98.0mmHgで、高血圧を発症しなかった患者の血圧の中央値は130.0mmHg/82.0mmHgだった。

 無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率は、高血圧を発症した患者で有意に改善されていた。

 OSの中央値は、最大収縮期血圧が140mmHg以上の患者で30.9カ月、140mmHg未満の患者で7.2カ月だった(p<0.0001)。最大拡張期血圧が90mm Hg以上の患者で32.2カ月、90mmHg未満の患者で14.9カ月だった(p<0.0001)。

 PFSの中央値は、最大収縮期血圧が140mmHg以上の患者で12.5カ月、140mmHg未満の患者で2.5カ月だった(p<0.0001)。最大拡張期血圧が90mmHg以上の患者で13.4カ月、最大拡張期血圧が90mmHg未満の患者では5.3カ月だった(p<0.0001)。

 客観的奏効率は、最大収縮期血圧が140mmHg以上の患者で54.8%、140mmHg未満の患者で8.7%だった(p<0.0001)。最大拡張期血圧が90mmHg以上の患者で57.3%、最大拡張期血圧が90mmHg未満の患者で24.6%だった(p<0.0001)。

 安全性について、スニチニブで治療した患者のグレード3以上の心血管、脳血管、眼、腎の有害事象の発現率は低く、高血圧を発症した患者と発症しない患者で同様という結果だった。ただし、腎への毒性は高血圧を認めた患者に多く発生していた。

 最終的な多変量解析でも、高血圧はPFS、OSの予後予測因子として、ECOG PSや診断から治療までの期間、LDH値などとともに残った。

 Rini氏は「スニチニブに関連する高血圧が臨床転帰の改善に関連することが分かった。そのメカニズムは今後解明されると思われる。この高血圧がバイオマーカーとなる可能性については、前向き試験による検証が必要」と話した。