EGFR遺伝子変異の有無を問わない進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するセカンドライン、サードライン治療として、エルロチニブもしくはドセタキセルの有効性と安全性を比較した結果、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)は両群間に有意差はなかった。しかし、PFSについて、EGFR遺伝子野生型例に限った解析ではドセタキセル群の方が良好であったことが、国内で行われたフェーズ3試験であるDELTA試験の結果から示された。国立病院機構高知病院呼吸器科の岡野義夫氏らが、6月4日まで米国シカゴで開催された第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で発表した。

 進行NSCLC患者に対するセカンドライン、サードライン治療として、エルロチニブもしくはドセタキセルは選択肢の1つとなっている。

 そこで、岡野氏らは進行NSCLC患者を対象に、エルロチニブとドセタキセルについて、セカンドライン、サードライン治療としての安全性と有効性を比較する無作為化多施設共同のフェーズ3試験であるDELTA試験を実施した。

 対象は、ステージIIIBまたはIV、ECOG PSが0-2、プラチナ製剤を含む1〜2つのレジメンでの化学療法治療歴を含む測定可能な腫瘍を持つ進行NSCLC患者。登録時にはEGFR遺伝子変異の有無は条件としておらず、ランダム化の際にEGFR遺伝子変異の有無は層別化因子としてはいないが、EGFR遺伝子変異検査を行っていることが登録時に強く推奨された。

 2009年8月から2012年7月にかけて、国立病院機構41施設から301人が登録された。エルロチニブ群(1日150mg連日投与、150人)もしくはドセタキセル群(3週間おきに60mg/m2、151人)に無作為に割り付け、病勢が進行するまで投与した。データは2013年1月17日に打ち切った。このうち、現在も投与を継続しているのはエルロチニブ群、ドセタキセル群ともに6人ずつ。

 主要評価項目はPFS、副次評価項目はOS、奏効率(RR)、安全性、EGFR遺伝子発現状態別の解析と設定した。

 患者背景は両群間に差はなかった。年齢中央値は67-68歳、男性割合が70-72%、ステージIVが80%、PS 0が51%、PS 1が44%、腺癌が68ー69%。EGFR遺伝子野生型は、エルロチニブ群では72.7%、ドセタキセル群では59.6%だった。EGFR遺伝子のExon19欠失もしくはL858R変異はエルロチニブ群14.0%、ドセタキセル群19.9%、他の変異はエルロチニブ群1.3%、ドセタキセル群2.0%、検査不十分か評価されていなかったのはエルロチニブ群12.0%、ドセタキセル群18.6%だった。

 患者全体におけるPFS中央値は、エルロチニブ群が2.0カ月に対し、ドセタキセル群が3.2カ月で、有意差はなかった(ハザード比1.222、95%信頼区間:0.966-1.548)。しかし、EGFR遺伝子野生型患者に限ると、エルロチニブ群が1.3カ月に対し、ドセタキセル群が2.9カ月で、ドセタキセル群が良好だった(ハザード比1.452、95%信頼区間:1.090-1.939)。

 患者全体におけるOS中央値は、エルロチニブ群が14.8カ月に対し、ドセタキセル群が12.2カ月で、有意差は認められなかった(ハザード比0.909、95%信頼区間:0.676-1.222)。EGFR遺伝子野生型患者に限っても2群間で有意差は見られず、エルロチニブ群のOS中央値は9.0カ月、ドセタキセル群は10.1カ月だった(ハザード比0.98、95%信頼区間:0.692-1.390)。

 患者全体の病勢制御率(DCR)はエルロチニブ群が61.9%だったのに対し、ドセタキセル群が77.2%で、ドセタキセル群で有意に高かった(p=0.005)。奏効率はエルロチニブ群が17.0%、ドセタキセル群が17.9%で差は認められなかった(p=0.878)。

 EGFR遺伝子野生型患者に限ると、RRはエルロチニブ群が5.6%、ドセタキセル群が20.0%、DCRはそれぞれ52.8%、70.6%で、ドセタキセル群で有意に高かった(それぞれp=0.003、p=0.017)。

 EGFR遺伝子のexon19欠失もしくはL858R変異を有するグループについて検討した結果、PFSはエルロチニブ群9.3カ月、ドセタキセル群7.0カ月、OSはエルロチニブ群は未到達、ドセタキセル群27.8%だった。いずれも統計学的には有意な差ではなかった。

 なお、試験治療中止後の治療については、エルロチニブ群はドセタキセル投与を受けたのが42.3%、無治療が26.4%、ドセタキセル群ではEGFR-TKIが37.9%、その他の治療が28.3%、無治療が33.8%だった。

 グレード3または4の有害事象のうち、エルロチニブ群では発疹が、ドセタキセル群では白血球減少症、好中球減少症、発熱性好中球減少症が有意に多かった。

 これらの結果から岡野氏は、「EGFR遺伝子変異の有無を問わないNSCLC患者に対するエルロチニブ投与は、PFSにおいてドセタキセルに対する優位性を示せなかった。EGFR遺伝子野生型患者において、ドセタキセル群はエルロチニブ群よりもPFSを有意に延長したが、OSにおいては有意差は見られなかった」と語った。