PIK3CA変異を持つ進行固形癌患者に対し、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)のα-アイソフォームを阻害する経口薬BYL719を単剤投与するフェーズ1試験の結果、良好な安全性プロファイルが示された。予備的な検討では9人で部分寛解(PR)が見られた。米国The University of Texas MD Anderson Cancer CenterのAna M. Gonzalez-Angulo氏らが、6月4日まで米国シカゴで開催された第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で発表した。

 癌細胞ではPI3K、Akt、mTOR経路が活性化し、腫瘍細胞の成長や増殖、抗癌剤への抵抗性に関わることが知られている。PI3K、Akt、mTOR経路の活性化は、PI3Kの触媒作用を持つサブユニットp110αをエンコードする遺伝子であるPIK3CAの変異もしくは増幅によって起こることが多い。

 BYL719は、PI3Kのα-アイソフォームを選択的に阻害する経口薬。基礎的検討では、特にPIK3CA変異を持つ複数の細胞株や、PIK3CA変異や増幅のある動物モデルにおいて抗腫瘍活性が確認されている。現在、PIK3CA変異を持つ進行固形癌への単剤投与、もしくはPIK3CA変異を持つエストロゲン受容体陽性の乳癌患者を対象にフルベストラントと併用投与する、フェーズ1試験が実施されている。

 今回報告されたのは、BYL719の単剤投与を検討した用量漸増オープンラベル多施設共同フェーズ1試験。対象は、PIK3CA遺伝子変異を持つ、切除不能な進行固形癌の成人患者。BYL719を1日1〜2回経口投与し、投与サイクルは28日とした。投与量は、1日1回投与の場合は30、60、90、180、270、350、400、450mg、1日2回投与の場合は120、150、200mgとした。薬物動態試験は、投与1、8、28日目に実施し、抗腫瘍効果については2、4、6、8コースの28日目に行った。MTD決定後、1日1回投与について投与量の拡大試験を実施した。

 主要評価項目は、MTDとフェーズ2試験での推奨投与量の決定。副次評価項目は、BYL719の安全性と忍容性、薬物動態プロファイル、有効性の予備的検討。

 2013年2月15日時点で、102人の進行固形癌患者に対しBYL719を投与した。1日1回投与は84人、1日2回投与は18人が登録された。

 患者背景を見ると、年齢中央値は59歳、女性割合は76%、WHO PS 0が37%、1が61%。原発巣の部位は、大腸癌が30%、乳癌が24%、卵巣癌が13%、頭頸部癌が9%、その他が25%だった。PIK3CA変異型が96%、野生型が1%、不明が3%、PIK3CAの増幅は1%を占めた。登録患者の25%が、術後補助療法もしくは術前化学療法を前治療で受けていた。
 
 BYL719の投与期間中央値は11.6週間(範囲:0.7-60.7)だった。86%の患者が投与を中止し、14%が試験継続中。投与中止理由を見ると、病勢進行が最も多く68%、有害事象が16%。1人が死亡したが、薬剤関連ではないと見られている。

 BYL719の用量を漸増した結果、1日1回450mgを投与した患者の44%で用量制限毒性(DLTs)が発現した。DLTsはグレード3の高血糖(2人)、グレード3の悪心(2人)だった。そのため、1日1回投与のMTDは400mgと決定した。

 続く用量拡大試験コホートでは、10%(4人)の患者において1日1回投与量400mgでDLTsが発現した。1日2回投与スケジュールでは、150mgを投与した患者の14%(1人)、200mgを投与した患者の80%(4人)でDLTsが見られた。

 平均相対用量強度(RDI)は81%だった。1日1回400mgを投与した患者の53%で減量が必要だった。その主な理由は、高血糖、発疹、悪心・嘔吐。

 最も多く見られた薬剤関連有害事象は高血糖(49%)で、その25%はグレード3または4だった。そのほか、悪心が43%、食欲減退が37%、下痢が35%、発疹または過敏症が34%、虚弱・疲労感が34%など。高血糖と発疹または過敏症を除き、グレード3または4の薬剤関連有害事象の発現頻度は多くはなかった(0-3%)。

 また、抗腫瘍活性の予備的検討では、1日に270mg以上を投与した9人の患者でPRが認められた。このうち、4人はPRが確定しており、2人は1日1回270mg投与の患者(乳癌、大腸癌)、2人は1日1回400mg(子宮内膜癌、子宮頸癌)だった。PRが未確定の5人の投与量は、3人が1日1回400mg、1人が1日1回450mg、1人が1日2回200mg。

 腫瘍縮小効果が最も見られた癌種は、乳癌と頭頸部癌だった。一方、大腸癌では、腫瘍縮小が見られないもしくは病勢進行する傾向が見られた。

 1日270mg以上投与した患者における無増悪生存期間(PFS)中央値は15.7週間で、このうちエストロゲン受容体陽性の乳癌患者(21人)は24.0週間、大腸癌患者(23人)は7.9週間、その他の癌種(36人)は15.4週間だった。

 これらの結果からGonzalez-Angulo氏は、「PIK3CA変異を持つ進行固形癌患者に対するBYL719の単剤投与は、良好な安全プロファイルを示した。発現頻度が最も高かった薬剤関連有害事象は高血糖で、1日1回投与時のMTDは400mgに決定した。予備的な検討では9人でPRが見られた」とまとめた。なお、1日2回投与の試験部分については現在進行中であるとした。