治癒切除後の膵癌に対する術後補助化学療法としてS-1を投与すると、ゲムシタビンを投与した場合と比べ、全生存(OS)、無再発生存(RFS)のほか、QOLについても有意に改善したことが報告された。日本人対象のフェーズ3試験であるJASPAC-01の最新解析結果について、静岡がんセンター消化器内科の福冨晃氏らが、5月31日から米国シカゴで開催された第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で発表した。

 治癒切除後膵癌への術後補助療法は、ゲムシタビンが標準治療となっている。一方、これまでの試験結果から、進行膵癌患者にS-1を単剤投与した際の全生存(OS)は、ゲムシタビンに対して非劣性だったほか、良好な忍容性が示されている。

 そこで福冨氏らは、治癒切除後膵癌患者への術後化学療法としてS-1を投与した際のOSについて、ゲムシタビンに非劣性であることを証明するために無作為化オープンラベルの多施設共同フェーズ3試験を行った。

 対象は、20歳以上、ECOG PSが0-1、UICCステージII以下もしくは動脈合併切除を施行したステージIIIで、3年以内に化学療法もしくは放射線療法を実施していない、R0またはR1切除を行った術後膵癌患者。

 切除術から10週間以内にゲムシタビン群(1000mg/m2を1、8、15日目に投与、4週間おきに6コース)とS-1群(体表面積に応じて80、100、120mg/日を1-28日に投与、6週間おきに4コース)に無作為に割り付けた。
 
 主要評価項目はOS、副次評価項目はRFS、有害事象イベント、健康関連QOL。QOLはEQ-5Dを用いた。

 2007年4月から2010年6月までに国内33施設から385人の患者が登録された。ゲムシタビン群に193人、S-1群に192人が割り付けられ、このうち解析対象は378人だった(ゲムシタビン群191人、S-1群187人)。2012年8月に行われた中間解析結果から、独立データモニタリング委員会は結果の早期公開を推奨。最終解析は2012年12月に実施された。対象となったのは219イベントだった。

 両群の患者背景に差はなかった。年齢中央値が66歳、男性割合が54-57%、ECOG PS 0が67-70%、T3が86-87%、N1が62-64%、ステージIIが91%、R0が86-88%。切除術から割り付けまでの期間中央値は45-48日間、切除術から術後補助療法までの期間中央値は50-56日だった。

 解析の結果、S-1のゲムシタビン群に対するOSハザード比は0.54(99.8%信頼区間:0.35-0.83)で、有意にS-1群の方がOSが良好だった(非劣性、優越性ともにp<0.0001)。OS中央値は、S-1群が未達で、ゲムシタビン群が25.9カ月だった。また、S-1群の2年生存率は70%(95%信頼区間:63-76)だったのに対し、ゲムシタビン群は53%(同:46-60)だった。

 OSのサブ解析では、対象症例数が少なかったT1-2(ハザード比1.26)とステージI(ハザード比1.27)以外は、S-1投与群の方が良好な傾向が見られた。

 S-1のゲムシタビン群に対する2年RFS率のハザード比は0.57(95%信頼区間:0.45-0.72)で有意にS-1群が良好だった(優越性についてp<0.0001)。RFS中央値は、S-1群が23.2カ月、ゲムシタビン群が11.2カ月だった。

 RFSのサブ解析でも対象症例の少なかったT1-2(ハザード比1.03)、ステージI(ハザード比0.92)以外はS-1投与群の方が良好だった。

 試験完遂率は、ゲムシタビン群で58%だったのに対し、S-1投与群で72%と高かった。治療中止理由を見ると、両群ともに毒性が最も多く、ゲムシタビン群が25%、S-1群が21%、次いで再発でそれぞれ14%、5%だった。相対用量強度(RDI)の中央値は、ゲムシタビン群が84%、S-1群が98%だった。

 S-1群と比べ、ゲムシタビン群で有意に発現頻度が高かったグレード3以上の有害事象は、好中球減少症(72.2% 対 13.3%)、白血球減少症(38.7% 対 8.5%)、血小板減少症(9.4% 対 4.3%)などだった。

 また、S-1群で有意に発現頻度の高かったグレード3以上の症状は、口内炎(2.7% 対 0%)、下痢(4.8% 対 0%)だった。

 初回の再発部位を見ると、両群ともに肝臓(ゲムシタビン群が39%、S-1群が29%)、局所再発(33%、29%)が多かった。

 再発後の治療の内訳をみると、ゲムシタビン群の55%がS-1ベースの治療を、S-1群の57%はゲムシタビンベースの治療を選択していた。

 生存者を対象に、EQ-5Dを用いてQOLを評価したところ、治療開始12カ月後、24カ月後のS-1群のQOLスコアは、ゲムシタビン群と比べて有意に良好だった(それぞれp=0.0016、p=0.0082)。再発前のデータのみを用いて解析した場合も同様の傾向が認められた。

 これらの結果から福冨氏は、「切除後膵癌に対するS-1による術後補助療法は、ゲムシタビンを投与した場合と比べ、OSとRFSで優越性が示されたほか、良好な忍容性が示された。S-1はQOLの改善に寄与することが示唆され、切除後膵癌患者への新しい標準治療となると考えられる」とまとめた。