HER2陽性の局所進行乳癌に対する術前化学療法へのトラスツズマブの併用は、無イベント生存率(EFS)と病理学的完全奏効率(pCR)を改善することがわかった。また、pCRは抗HER2薬による術前補助療法の有効性を予測する可能性があることが示された。5月31日から米国シカゴで開催された第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で、イタリアSan Raffaele Hospital のLuca Gianni 氏が発表した。

 NOAH試験では、HER2陽性の局所進行乳癌を対象に、術前に化学療法のみを行って手術および放射線療法を行う群(化学療法単独群、113人)と、術前化学療法にトラスツズマブを併用し、手術および放射線療法を行った後、術後補助療法としてトラスツズマブを投与する群(トラスツズマブ併用群、115人)、さらに平行群としてHER2陰性乳癌に対して術前化学療法のみを行って手術および放射線療法を行う群(HER2陰性群、99人)を登録し、トラスツズマブ併用の有効性と安全性を比較検討した。

 術前化学療法は、ドキソルビシン+パクリタクセル(AT療法)を3週間おきに3サイクル、続いてパクリタクセル(T)を3週間おきに4サイクル、その後、CMF療法(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-FU)を4週おきに3サイクル実施した。トラスツズマブ併用群では、トラスツズマブを上記のレジメンに同時併用した。

 トラスツズマブ併用群では、トラスツズマブを術後最大52週間(3週おきに52週まで)継続投与した。

 このNOAH試験の最初の検討において、pCR率を改善することが示されていた。なお、2005年11月以降は化学療法単独群に対し、クロスオーバーが許可され、19例(16%)がトラスツズマブを投与された。

 今回、同グループは、NOHA試験におけるEFSと全生存期間(OS)についての最新の解析結果を発表した。

 主要評価項目はEFSとし、EFSの定義は、治療中の増悪または術後再発、もしくはあらゆる原因による死亡とした。副次評価項目はpCR率、OS、無再発生存期間(RFS)、安全性と忍容性を評価した。RFSは、術後の局所再発、領域再発、遠隔転移、対側乳房での発癌までの期間と定義した。

 登録時患者背景では病期(T/N)や年齢などにばらつきはなかったが、化学療法単独群とトラスツズマブ併用群ではHER2陰性群よりもER/PgR陽性の割合が少なかったことをGianni氏は指摘した(化学療法単独群35例、トラスツズマブ併用群35例、HER2陰性群64例)。

 ITT解析によるpCRは、トラスツズマブ併用群では化学療法単独群のほぼ2倍となった(併用群43%、化学療法単独群22%、HER2陰性群17%、p=0.0007)。EFSについても、イベント発生数が化学療法単独群の62例(52.5%)に対して、トラスツズマブ併用群では49例(41.9%)と有意に少なかった(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.44-0.93、p=0.016)。
 
 また、ITT解析によるHER2陽性例におけるOSの評価を行った結果、トラスツズマブ併用群で死亡した患者は36例(30.8%)、化学療法単独群では47例(39.8%)で、統計学的に有意ではなかったものの、トラスツズマブ併用群でOSが延長する傾向があった(ハザード比:0.66、95%信頼区間:0.43-1.01、p=0.055)。

 次に、HER2陽性例における術後のRFSを評価したところ、トラスツズマブ併用群では再発を37例(37.8%)に認めたが、化学療法単独群の48例(53.3%)よりも有意に少なかった(ハザード比:0.58、95%信頼区間:0.38-0.90、p=0.012)。

 HER2陽性例全体のサブグループ解析では、年齢(50歳以下または51歳以上)、腋下リンパ節転移の有無(N0またはN1/2)、pCR、炎症性乳癌かどうか、ER/PgR(陽性または陰性)といった集団すべてにおいてトラスツズマブ併用が良好である傾向が示された。

 さらに解析により、トラスツズマブの併用の有無とpCRとの間に有意な相関があることが示唆された(interaction p=0.037)。トラスツズマブを併用することによるEFSの改善はpCRが得られたかどうかと相関し、トラスツズマブを併用することで得られたpCRはEFSの改善に相関していた。化学療法単独群ではこの相関は認められなかった。

 有害事象について検討が行われ、グレード2以下の血管イベントが、トラスツズマブ併用群、化学療法単独群、HER2陰性群でそれぞれ4例、2例、0例。グレード3の心房細動がHER2陰性の2例で発症した。

 前回は治療可能なうっ血性心不全が2例報告されたが、その後の発症はなく、Gianni氏らは、ドキソルビシンとトラスツズマブを併用したにもかかわらず心毒性に関する忍容性は良好だったとしている。

 最後に、Gianni氏は、「HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブによる術前補助療法は、質的にも数値的にも優れたpCRをもたらし、最終的に長期的ベネフィットに繋がるだろう」と結論し、「今後、pCRは、HER2標的薬による術前補助療法の早期指標や主要評価項目としての役割を担う可能性が高い」と述べた。