開発中の新規ALK阻害剤LDK378は、クリゾチニブ治療歴の有無にかかわらず、ALK変異陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対して有効であることがフェーズ1試験から示された。5月31日から米国シカゴで開催された第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO 2013)で、米国Massachusetts General Hospital Cancer CenterのAlice Tsang Shaw氏が発表した。

 ALK遺伝子変異は、NSCLCの3〜7%に認められることが知られており、非喫煙者、若年性癌、腺癌で起こりやすく、EGFRやKRASとは独立していることがわかっている。

 また、現在、ALK遺伝子陽性の進行NSCLC患者に対して、ALK阻害薬クリゾチニブが標準治療となっている。クリゾチニブの客観的奏効率(ORR)は60%、無増悪生存期間(PFS)中央値は8〜10カ月に達することが示されている。

 しかし、クリゾチニブが奏効した症例であっても1〜2年以内に耐性が発生することが報告されており、特に中枢神経系(CNS)で再発する頻度が高い。耐性のメカニズムは多様だが、ALK阻害薬抵抗性変異と代替経路の獲得によることがわかっている。実際、クリゾチニブ抵抗性腫瘍の3分の1では新たな増幅や変異が起こっている。

 そこで、Shaw氏らは、次世代のALK阻害剤の可能性を検討する目的でLDK378のフェーズ1試験を行った。LDK378は経口の選択的ALK阻害剤で、基礎的な検討では、クリゾチニブより強力なALK阻害活性が示されている。また、クリゾチニブ耐性を示すEML4-ALK陽性NSCLC細胞株を移植したモデルで長期に抗腫瘍効果を示した。

 多施設共同で実施されたフェーズ1用量漸増試験には患者130人を登録した。対象は、PS2以下の、標準治療で病勢進行した進行/転移癌患者で、FISHによりALK遺伝子変異陽性と確定したNSCLC患者、またはFISH、PCR、IHCによりALK遺伝子変異陽性と確定したその他の癌の患者とした。CNS転移については、未治療の場合は無症候性の患者、また既治療の場合は神経学的に安定している患者は登録可能とした。

 最初に59人を対象に用量漸増試験を行った。LDK378を50mgから750mgまで用量漸増的に連日経口投与し、主要評価項目である最大耐量(MTD)を750mg/日と確定した。その後、残りの患者71人が加わり、計130人を対象に、ALK阻害薬抵抗性NSCLC、ALK阻害薬治療歴のないNSCLC、肺癌以外の腫瘍の3つのグループに分けて比較検討した。

 患者背景は、年齢中央値53歳(22-80)、女性が78例(60%)、PS0/1/2はそれぞれ25例(19%)、89例(69%)、16例(12%)だった。癌種ではNSCLCが122例(94%)と最も多く、乳癌が4例(3%)、不明が4例(3%)だった。また、ALK阻害剤による治療歴があるNSCLC患者は82例(63%)、ALK阻害剤治療歴なしの患者は40例(31%)だった。

 400〜750mgを投与したNSCLC患者114例における解析の結果、奏効率は58%(CR 1%、PR 57%)クリゾチニブ治療歴があるNSCLC(79例)の奏効率は57%、クリゾチニブ治療歴のないNSCLC(35例)の奏効率は60%だった。

 750mgを投与したNSCLC患者(78例)の奏効率は60%(CR 0%、PR 60%)で、クリゾチニブ治療歴があるNSCLC(49例)の奏効率は59%、クリゾチニブ治療歴のないNSCLC(29例)の奏効率は62%だった。

 400mg/日以上を投与した患者114例の無増悪生存期間(PFS)中央値は8.6カ月(95%信頼区間:5.7-9.9)で、750mg/日を投与した78例における6カ月PFS率は60.7%だった。奏効が得られた患者(66例)における奏効期間(DOR:duration of response)中央値は8.2カ月で、750mg/日を投与した47例における6カ月奏功率は60.6%だった。

 続いてShaw氏は、LDK387の効果が6カ月持続したCNS転移症例の画像を提示し、CNS転移にも効果があったことを紹介した。

 患者の15%以上にみられた有害事象は、吐気73%、下痢72%、嘔吐58%、疲労41%、ALT増加26%、食欲減退25%、便秘24%、腹痛23%、AST増加18%、無力症18%、咳嗽15%だった。グレード3/4の重篤有害事象は、ALT上昇19%、AST上昇10%、下痢8%、リパーゼ上昇5%、低カリウム血症5%、吐気5%だった。治療関連死はなかったが、3例(2%)の患者が重篤有害事象により試験を中止した。

 以上のことから、Shaw氏は、「LDK378は、ALK変異陽性NSCLCに対して400〜750mgの連日投与で強力な抗腫瘍活性が期待でき、クリゾチニブ治療歴の有無にかかわらず奏効率は約6割を示した。有害事象はほとんどがグレード2以下で安全性は良好である」と結論した。

 また、LDK378は、2013年3月6日に米食品医薬品局(FDA)のBreakthrough Therapy(画期的治療)の指定を受けたことに加え、近く予定されている複数のフェーズ2/3試験についても言及した。