切除可能なHER2陽性乳癌に対する術前補助化学療法として、アントラサイクリン系抗癌剤とタキサン系抗癌剤とトラスツズマブの併用は、高い病理学的完全奏効(pCR)率が得られ、トラスツズマブの開始のタイミングが異なるレジメンの間で差がないことが、フェーズ3のACOSOG Z1041試験から示された。5月31日から6月4日まで米国シカゴで開催されている第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で、米国University of Texas MD Anderson Cancer CenterのAman Buzdar氏が発表した。

 ACOSOG Z1041試験の主な目的は、乳房内のpCR(pBCR)率について、FEC療法(フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド)施行後にパクリタキセルとトラスツズマブの併用療法を施行するレジメン(FEC→P+T)と、パクリタキセルとトラスツズマブの併用療法を施行後にFEC療法とトラスツズマブを併用するレジメン(P+T→FEC+T)で比較することだった。

 対象は、切除可能、T2-T3、HER2陽性の浸潤性乳癌の女性で、2cm以上の腫瘍および/またはリンパ節転移が1個以上あること、左室駆出率(LVEF)が55%以上であることなどが適格基準に含まれた。

 FEC→P+Tのレジメンで治療する1群とP+T→FEC+Tのレジメンで治療する2群に、対象を1対1でランダムに割り付けた。

 1群では、FEC療法は21日を1サイクルとし、フルオロウラシル500mg/m2、エピルビシン75mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2を1日目に投与し、4サイクル施行した。FEC療法完了の21日後より、パクリタキセル80mg/m2を週1回、12サイクル施行し、トラスツズマブは初回4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを週1回、12サイクル施行した。同併用療法の完了後、6週以内に手術が行われ、術後3、4週目から21日を1サイクルとして、トラスツズマブの投与を計52サイクル施行した。

 2群では、パクリタキセルとトラスツズマブの併用療法を12サイクル施行した。併用療法完了の7日後よりFEC療法を4サイクル施行し、トラスツズマブの12週の投与も施行した。FEC療法とトラスツズマブの完了後、6週以内に手術が行われた。術後3、4週目から、トラスツズマブを1群と同様に投与した。

 2007年9月15日から2011年12月15日までに282人が登録され、実際に試験治療を受けたのは1群138人、2群142人となった。両群の患者背景はバランスがとれており、両群ともに白人が80%以上、50歳以上の患者が50%以上を占めた。両群ともにT3-4は39.1%、リンパ節転移を有する患者は1群64.5%、2群63.4%だった。ホルモン受容体陰性の患者は1群39.1%、2群40.8%だった。高血圧の既往を有する患者は両群ともに約25%、ベースラインのLVEFの分布は両群で同様だった。

 結果として、pBCR率は両群で有意差はなく、1群56.5%(95%信頼区間:47.8-64.9)、2群54.2%(同:45.7-62.6)だった(p=0.72)。cN1-3の患者における乳房内と腋窩リンパ節のpCR率は、1群(89人)48.3%(95%信頼区間:37.6-59.2)、2群46.7%(同:36.4-56.9)と同様だった(p=0.88)。

 ホルモン受容体の状態によるpBCR率は、陰性の患者は陽性の患者と比べて高かった。陽性の患者では1群45%、2群37.8%、陰性の患者ではそれぞれ72.4%と76.7%となった。

 治療中に多く観察されたグレード3以上の有害事象は、好中球減少が1群25.3%、2群32.4%、疲労がそれぞれ4.3%と8.5%、感覚神経障害が3.6%と4.9%に発現した。心血管事象の発現は2群間で同様だった。治療に関連する死亡はなかった。

 Buzdar氏は「トラスツズマブの投与開始のタイミングによるpCR率の違いはみられなかった。アントラサイクリン系抗癌剤とトラスツズマブの同時併用はpCR率を上昇させなかった」と話した。