HER2陽性乳癌に対する術前補助化学療法として、二重にHER2を標的とする(dual HER2-targeting)weeklyパクリタキセル+トラスツズマブラパチニブ(THL)は、weeklyパクリタキセル+トラスツズマブ(TH)と比べて病理学的完全奏効(pCR)率を10%上昇させたが、事前に有意と定められた基準は満たせなかったことが、フェーズ3のCALGB40601試験から示された。また、ホルモン受容体陰性の患者では、陽性の患者よりも高いpCR率が得られたこともわかった。5月31日から6月4日まで米国シカゴで開催されている第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で、米国University of North Carolina at Chapel HillのLisa A. Carey氏が発表した。

 HER2陽性乳癌の最近の臨床試験では、dual HER2-targetingで有用性が得られるとのエビデンスが報告されている。

 CALGB40601試験の目的は、THとdual HER2-targetingのTHLを比較し、THLでpCR率が20%上昇するかどうかを判断することだった。pCRは浸潤性乳癌を認めないこと(非浸潤性乳管癌の残存も含む)とした。

 対象は、新たに診断された、非炎症性、II-III期のHER2陽性乳癌の患者。全例が治療前に生検を受け、3群にランダムに割り付けられた。weeklyパクリタキセルは3群すべてに投与し、トラスツズマブとラパチニブを併用するTHL群、トラスツズマブのみを併用するTH群、ラパチニブのみを併用するTL群とした。治療は16週間行い、その後手術を施行した。術後は、dose-dense AC療法(ドキソルビシン、シクロホスファミド)を4サイクル、トラスツズマブの投与を34週間行うことが推奨された。

 パクリタキセルは80mg/m2を週1回、トラスツズマブは初回4mg/kg、2回目以降は2mg/kgで週1回、ラパチニブ750mg/日(2010年4月以前は1000mg/日)を術前に16週間投与した。TL群ではパクリタキセルを同量、ラパチニブ1000mg/日(2010年4月以前は1500mg/日)を投与する設定だったが、ALTTO試験の予備解析の有効性と毒性のデータから、早期に中止された。

 305人が登録され、299人が実際に治療を受けた。TH群118人(年齢中央値50歳)、THL群117人(同48歳)、TL群64人(同50歳)となった。3群の患者背景はバランスがとれており、II期の患者の割合はいずれも約2/3で、ホルモン受容体陽性の割合は3群ともに約60%だった。

 グレード3以上の毒性はラパチニブを含む群で多く発現し、特に発疹と下痢が15%以上に発現した。心毒性の増加はいずれの群にも認めなかった。

 主要評価項目である乳房内のpCR率は、TH群46%、THL群56%、TL群37%となった。TH群のpCR率は過去の研究よりも高く、THL群との差は10%で、事前に有意と定められた20%の基準を満たせなかった(p=0.12)。

 ホルモン受容体の有無で乳房内のpCR率をみると、ホルモン受容体陽性の患者(173人)では、TH群39%、THL群42%、TL群31%で、TH群とTHL群の差は3%のみだった。一方、ホルモン受容体陰性の患者(123人)のTHL群のpCR率は77%と高く、TH群55%、TL群37%だった。

 さらに乳房と腋窩のpCR率をみると、全対象では、TH群43%、THL群52%、TL群29%だった。ホルモン受容体陽性の患者ではそれぞれ38%、42%、29%だった。ホルモン受容体陰性の患者のTHL群のpCR率は66%と高く、TH群51%、TL群30%だった。

 さらに予備的な解析では、HER2陽性乳癌のIntrinsic subtypeで抗HER2抗体製剤に対する感受性が異なり、HER2-EnrichedのサブタイプのpCR率が高いと考えられることが示された。