転移を有するHER2陽性乳癌のセカンドライン治療について、ポピュレーションベースのレトロスペクティブ研究が行われ、中間結果では、ラパチニブトラスツズマブの全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)に有意差は示されなかった。ただし、生存に対する有用性はトラスツズマブで強い傾向がみられた。5月31日から6月4日まで米国シカゴで開催されている第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で、イスラエルBeilinson HospitalのRinat Yerushalmi氏が発表した。

 イスラエルでは2010年1月より、トラスツズマブを用いたファーストライン治療で進行した転移を有するHER2陽性乳癌に対し、ラパチニブとトラスツズマブが保険償還されている。しかし、転移を有するHER2陽性乳癌のセカンドライン治療として、化学療法との併用におけるラパチニブまたはトラスツズマブの有効性は不明である。

 Yerushalmi氏らは、実臨床(real-life)についてのレトロスペクティブ研究において、ラパチニブまたはトラスツズマブを用いたセカンドライン治療の転帰を比較した。

 イスラエル最大の保険医療提供者であるClait Health Services’(CHS)のコンピュータデータベースを用いて、2010年1月1日から2012年3月31日までに、トラスツズマブを含むファーストライン治療を施行後、セカンドライン治療としてラパチニブまたはトラスツズマブの投与を受けた、転移を有する乳癌患者全例を特定した。その上で患者背景と治療に関するデータを収集した。追跡の最終日は2013年3月31日だった。

 主要評価項目は全生存期間(OS)で、抗HER2抗体製剤によるセカンドライン治療の開始日から死亡または追跡の最終日までの期間と定義した。副次的評価項目は無増悪生存期間(PFS)とし、CT画像の評価を行わなかったため、セカンドライン治療の期間または追跡の最終日までの期間と定義した。

 76人が対象となり、ラパチニブを投与したのは30人(ラパチニブ群)、トラスツズマブを投与したのは46人(トラスツズマブ群)で、平均年齢はそれぞれ60.83歳と63.91歳、併存症を評価するスコアのCharlson co-morbidity index scoreの平均はそれぞれ4.80と4.85で同様だった。

 前治療でトラスツズマブによる術後補助化学療法が行われた患者は、ラパチニブ群33.3%、トラスツズマブ群13.0%(p<0.05)、ホルモン療法が行われた患者はそれぞれ30.0%と63.0%で、有意差がみられた(p<0.01)。この2つの違いが転帰に影響した可能性が考えられた。

 追跡期間中に40人が死亡し、ラパチニブ群は22人(73.3%)、トラスツズマブ群は18人(39.0%)だった。

 OS中央値は、ラパチニブ群は10.0カ月、トラスツズマブ群は未到達だった。多変量のCox回帰分析では、調整ハザード比は1.40(95%信頼区間:0.68-2.88)となり、有意差はなかった(p=0.357)。

 前治療のトラスツズマブによる術後補助化学療法は、ハザード比2.36(95%信頼区間:1.03-5.41)で、OSの短縮と有意に相関した(p<0.05)。一方、ホルモン療法はハザード比0.29(同:0.13-0.65)で、良好な転帰と有意に相関した(p<0.05)。

 PFS中央値は、ラパチニブ群5.0カ月(95%信頼区間:3.5-6.5)、トラスツズマブ群7.0カ月(同:4.2-9.8)となった。多変量のCox回帰分析では、調整ハザード比は1.20(同:0.69-2.10)となり、有意差はなかった(p=0.513)。

 OSと同様にホルモン療法はPFSの延長と相関したが(p<0.01)、トラスツズマブによる前治療はPFSに相関しなかった。