葉酸受容体-α(FR-α)や甲状腺特異的転写因子(TTF-1)の発現は、進行非扁平非小細胞肺癌(NS-NSCLC)患者に対するペメトレキセドを用いた導入療法と維持療法における予後予測に有効な可能性が示された。ただし、少数例の検討結果であり、今後詳細な検討が必要だとした。フェーズ3試験であるPointBreak試験のトランスレーショナル研究の結果から明らかになったもので、5月31日から米国シカゴで開催されている第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で、米国David Geffen School of Medicine at UCLAのEdward B. Garon氏らが発表した。

 PointBreak試験は、未治療NS-NSCLCを対象に、ペメトレキセド+カルボプラチン+ベバシズマブによる導入療法後に維持療法としてペメトレキセド+ベバシズマブ併用を投与する群と、パクリタキセル+カルボプラチン+ベバシズマブによる導入療法後にベバシズマブによる維持療法を実施する群の予後を比較検討したもの。その結果、全生存期間(OS)について、ペメトレキセド使用群のパクリタキセル使用群に対する優越性は示されなかった。

 今回報告したのはPointBreak試験のトランスレーショナル研究の結果で、EGFR遺伝子変異、チミジル酸合成酵素(TS)、FR-α、TTF-1の発現について検討した。TSはペメトレキセドの標的で、DNA合成と細胞増殖で重要な役割を果たしている。FR-αは、葉酸とペメトレキセドなどの葉酸代謝拮抗薬の輸送体。また、TTF-1は肺腺癌の75-85%で発現しており、予後予測因子であることが知られている。これらはペメトレキセドの効果と関係があると考えられるため、解析対象とした。

 対象は、前治療を受けていない、PS 0-1、ステージIII−IVのNS-NSCLC患者。状態の安定している脳転移例は登録可能としたが、制御不能な胸水やグレード1以上の下肢ニューロパチー合併例は除外した。

 PointBreak試験では、導入療法として、ペメトレキセド(500mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)+ベバシズマブ(15mg/kg)を併用投与する群(以下、ペメトレキセド群)と、パクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)+ベバシズマブ(15mg/kg)を併用投与する群(以下、パクリタキセル群)の2群に1:1で割り付け、21日おきに4サイクル実施した。導入療法後の維持療法は、ペメトレキセド群にはペメトレキセドとベバシズマブを、パクリタキセル群にはベバシズマブを21日おきに病勢進行するまで投与した。

 939人の患者を登録し、うち1つ以上のマーカーについて評価可能だった211人を対象に解析した。EGFR変異はPCR法で、TTF-1蛋白、TS蛋白、FR-α蛋白の発現状態は免疫染色法で調べた。

 各解析集団における患者背景は、ほぼ同じだった。女性割合は41-49%、ECOG PS 0は38-44%、腺癌患者は76-81%。EGFR遺伝子変異は8.3%(11人)で確認され、これまでの報告と同等の変異陽性率だった。

 解析の結果、治療内容にかかわらずTTF-1蛋白陽性患者は陰性患者と比べ、OSやPFSが有意に長かった。OS中央値は、TTF-1蛋白陽性患者(139人)が14.9カ月に対し、TTF-1蛋白陰性患者(66人)が8.7カ月(ハザード比0.48、p<0.001)だったほか、PFS中央値はそれぞれ6.9カ月、4.5カ月だった(ハザード比0.616、p=0.006)。さらに、TTF-1蛋白陽性患者の奏効率は38.9%で、TTF-1蛋白陰性患者の19.7%と比べ、高い奏効率を示した(オッズ比2.68、p=0.008)。

 治療レジメン別に予後を見ると、TTF-1蛋白陽性患者におけるペメトレキセド群(73人)のOS中央値は17.6カ月、パクリタキセル群(66人)は12.8カ月で両群間に有意差はなかった(p=0.08)。TTF-1蛋白陰性患者においてはそれぞれ7.6カ月、9.1カ月で、同様に有意差は見られなかった(p=0.497)。

 一方、TTF-1蛋白陽性患者において、ペメトレキセド群のPFS中央値は7.3カ月となり、パクリタキセル群の5.8カ月よりもPFSが長い傾向が示された(p=0.203)。TTF-1蛋白陰性患者ではそれぞれ4.4カ月、4.5カ月で、有意差はなかった(p=0.613)。

 FR-α蛋白陽性患者では、ペメトレキセド群とパクリタキセル群のPFSに有意差はなかったが(6.1カ月 対 7.1カ月)、FR-α蛋白陰性患者ではパクリタキセル群が4.5カ月だったのに対し、ペメトレキセド群が6.4カ月と有意に延長した(ハザード比0.486、p=0.011)。OSについてはどちらも両群間に有意差はなかった。TS蛋白の発現状態とOS、PFSとの間には、有意な関係は確認されなかった。

 これらの結果からGaron氏は、「TTF-1蛋白陽性患者は陰性患者と比べ、OSやPFSが有意に長く、RRが有意に高かったことから、予後予測因子となることが示唆された。また、有意差は認められなかったものの、TTF-1蛋白陽性でペメトレキセドを投与した患者はOSとPFSが長い傾向が確認された。一方、FR-αは、ペメトレキセドによる維持療法のPFSを予測するマーカーとなる可能性がある」とした。しかし、今回の解析は少人数を対象にしているため、結論は限定的であると補足している。