トラスツズマブに抵抗性でタキサンによる治療歴があるHER2陽性進行乳癌患者に対し、トラスツズマブとビノレルビンにエベロリムスを追加することにより、進行または死亡のリスクが22%減少することが、フェーズ3のBOLERO-3試験から明らかになった。同試験は、HER2陽性乳癌に対しmTOR阻害剤の有用性が示された初の試験。5月31日から6月4日まで米国シカゴで開催されている第49回米国臨床腫瘍学会(ASCO2013)で、米国Emory University School of MedicineのRuth M. O’Regan氏が発表した。

 BOLERO-3試験には、日本を含む21カ国から159施設が参加した。同試験の対象は、局所進行または転移を有するHER2陽性進行乳癌で、タキサン系抗癌剤による前治療を受け、トラスツズマブによる治療で再発または進行を認めた患者とした。トラスツズマブ+ビノレルビンに加えて、エベロリムス(エベロリムス群)またはプラセボ(プラセボ群)を併用する群に、患者を1対1でランダムに割り付けた。進行または受容不能な毒性の発現まで治療を継続した。

 トラスツズマブは初回は4mg/kg、2回目以降は2mg/kgを週1回、ビノレルビンは25mg/m2を週1回、エベロリムスは5mgを毎日投与した。同試験の主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次的評価項目は全生存期間(OS)、奏効率、ECOG PS悪化までの期間などだった。層別化因子は前治療におけるラパチニブの使用だった。

 2009年10月から2012年5月までに569人が登録され、エベロリムス群284人(年齢中央値55歳)、プラセボ群285人(同54歳)となった。

 エベロリムス群とプラセボ群において、ECOG PS 1または2の患者はそれぞれ32%と34%、ホルモン受容体陽性の患者は55%と56%だった。内臓転移を有する患者はエベロリムス群79%、プラセボ群75%で、中枢神経系転移はそれぞれ7%と2%だった。

 前治療として、トラスツズマブ、タキサン系抗癌剤は両群ともに100%の患者に投与されており、ラパチニブは両群ともに27%に投与されていた。転移に対する前治療の化学療法のライン数は両群ともに2が半数近くを占めた。

 主要評価項目であるPFSは、エベロリムス群7.00カ月(95%信頼区間:6.74-8.18)、プラセボ群5.78カ月(同:5.49-6.90)、ハザード比は0.78(同:0.65-0.95)となり、有意差が認められた(p=0.0067)。

 奏効率は、エベロリムス群40.8%、プラセボ群37.2%で、有意差はなかった(p=0.2108)。臨床的有効率(CBR)もそれぞれ59.2%と53.3%で同様だった(p=0.0945)。

 2013年3月15日のカットオフ日の時点で220人が死亡し、エベロリムス群は36.3%、プラセボ群は41.1%だった。試験治療による死亡と有害事象による死亡は両群で同様であり、1群当たりそれぞれ2.5%と0.7%だった。OSの最終解析は384人の死亡が確認された後に行われる予定だ。

 エベロリムスの有害事象は、乳癌における既知の安全性プロファイルと一致していた。エベロリムス群に発現したグレード3以上の血液毒性は、好中球減少73%、貧血19%、発熱性好中球減少16%、血小板減少4%だった。非血液毒性(全グレード)では、口内炎、疲労、発熱、下痢、悪心、食欲低下、便秘がそれぞれ30%以上に発現し、グレード3以上の事象はそれぞれ13%、12%、3%、4%、3%、1%、1%未満だった。

 Global Health Status(QL2)スコアが悪化するまでの期間は、エベロリムス群8.31カ月、プラセボ群7.29カ月、ハザード比0.98(95%信頼区間:0.77-1.25)で、有意差はなかった(p=0.8386)。

 O’Regan氏は「mTORを標的とする治療は、トラスツズマブベースの治療の有用性を最大限にするうえで実現性があるアプローチ。エベロリムスとビノレルビンとトラスツズマブの併用療法は、トラスツズマブ抵抗性のHER2陽性進行乳癌の適切な治療選択肢と考えられる」と結んだ。

 現在進行中のBOLERO-1試験では、HER2陽性進行乳癌患者のファーストライン治療として、エベロリムスの評価が進められている。