日本人の乳癌において、術前化学療法(NAC)で病理学的完全奏効(pCR)が得られなくても、Ki-67値が大きく減少していれば、無再発生存(RFS)に関して、癌の型によらずpCRが得られた患者と同様な予後が期待できる可能性が明らかとなった。臨床データのレトロスペクティブな解析の結果示されたもの。成果は5月31日から4日までシカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、国立がん研究センター東病院の松原伸晃氏によって発表された。

 研究グループは2000年1月から2011年12月までに、術前化学療法としてアントラサイクリンのみ、またはタキサンとの併用を受け、手術を受けた450人(Luminal型195人、トリプルネガティブ126人、HER2 129人)の乳癌患者についてレトロスペクティブに解析した。NAC前のバイオプシー試料とNACを受け手術した検体について、免疫組織化学法で、Ki-67値、ホルモン受容体の状態、HER2受容体の状態について解析した。

 pCRは19.5%の患者で認められた。pCRが得られなかった患者をNAC後のKi-67値の変化に基づいて3グループに分けた。高度減少群(Ki-67値がNAC前に比べて80%超減少)、 軽度減少群(Ki-67値がNAC前に比べて0%から80%減少)、増加群(Ki-67値がNAC前に比べて増加)の3群についてRFS率を比較した。

 pCRが得られなかった患者362人(Luminal型182人、トリプルネガティブ94人、HER2 86人)中281人(64%)でKi-67値の減少が認められた。全体のうち15.1%の患者が高度減少群、62.6%の患者が軽度減少群、22.3%の患者が増加群だった。5年RFS率は高度減少群は90.0%、軽度減少群は75.4%、増加群が46.9%で3群の間に有意な差(p<0.001)が認められた。

 ルミナール型乳癌の5年RFS率は、高度減少群96.4%、軽度減少群79.5%、増加群49.7%で、3群の間に有意な差(p=0.001)が認められた。トリプルネガティブ乳癌の5年RFS率は高度減少群78.0%、軽度減少群62.7%、増加群36.6%で、3群の間に有意な差(p=0.034)が認められた。HER2陽性乳癌の5年RFS率は高度減少群91.0%、軽度減少群78.3%、増加群54.9%で、3群の間に有意な差(p=0.033)が認められた。高度減少群のRFS率はpCRが得られた患者群と匹敵していた(ハザード比1.12、p=0.792)。