HER2陰性の腋窩リンパ節転移陽性乳癌への術後補助療法として、dose-dense(dd)AC療法後のパクリタキセルにゲムシタビンを追加するレジメンの有効性を検討した結果、5年無病生存期間(DFS)と5年全生存期間(OS)は、dd-AC療法後にパクリタキセルのみを投与するレジメンやTAC療法との間に有意差が見られなかったことが示された。また、dd-AC療法後にパクリタキセルを投与するレジメンとTAC療法のDFSに有意差はなかった。NSABP B-38試験の結果で、米国Washington Cancer Institute at Washington Hospital Center のSandra M. Swain氏が、6月1日から米国シカゴで開催された第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で発表した。

 NSABP B-38試験の目的は、ddAC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)療法後にパクリタキセルを投与するレジメンやTAC(ドキソルビシン+シクロホスファミド+ドセタキセル)療法に対する、ddAC療法後のパクリタキセル+ゲムシタビンのDFSに関する優越性を検証すること。TAC療法とddAC療法+パクリタキセルレジメンのDFSの比較も目的とした。

 対象は、前治療のないHER2陰性の腋窩リンパ節転移陽性乳癌患者4894人で、登録期間は2004年10月1日から2007年3月3日。

 登録患者を(1)TAC群1630人(ドキソルビシン50mg/m2、シクロホスファミド500mg/m2、ドセタキセル75mg/m2、21日おき、6サイクル)(2)ddAC療法(ドキソルビシン60mg/m2、シクロホスファミド600mg/m2、14日おき、4サイクル)→パクリタキセル(175mg/m2、14日おき、4サイクル):ddAC→P群1634人(3)ddAC療法(ドキソルビシン60mg/m2、シクロホスファミド600mg/m2、14日おき、4サイクル)→パクリタキセル(175mg/m2、14日おき、4サイクル)+ゲムシタビン(2000mg/m2、14日おき、4サイクル):ddAC→P+G群1630人──の3群に割り付けた。ER陽性患者には、化学療法後にホルモン療法を5年間実施した。中央追跡期間は5.3年。

 患者背景は3群間に差はなかった。閉経前患者は45〜46%、白人は86〜87%、黒人は8〜9%。ホルモン受容体(ER)陰性かつプロゲステロン受容体(PgR)陰性患者は20%、ER陽性かつ/またはPgR陽性は80%。腫瘍サイズは0-2cmが39〜41%。術式では、乳房切除術が50%、乳腺腫瘍摘出術が46〜47%を占めた。化学療法の完遂率は、TAC群が91%、AC→P群が88%、AC→P+G群が88%。放射線治療の実施状況では、未治療が19〜21%、局所照射が31〜33%、局所かつ部分照射は46〜50%だった。

 試験の結果、5年DFS率は、TAC群が80.1%、ddAC→P群が82.2%、ddAC→P+G群が80.6%で、ddAC→P+G群とTAC群、ddAC→P群との間に有意差はなかった。また、ddAC→P群とTAC群のDFSに有意差は認められなかった。

 5年OS率は、TAC群が89.6%、ddAC→P群が89.1%、ddAC→P+G群が90.8%で、ddAC→P+G群とTAC群、ddAC→P群との間に有意差はなかった。

 有害事象は、グレード0-2の発現が、TAC群が59%、ddAC→P群が56%、ddAC→P+G群が54%で見られた。

 TAC群では、グレード3、4の有害事象のうち、発熱性好中球減少症、下痢の発現率は有意に高かった。グレード3、4の発熱性好中球減少症の発現率は、TAC群が9%、ddAC→P群が3%、ddAC→P+G群が3%、グレード3、4の下痢は、それぞれ7%、2%、2%だった。

 一方、ddAC→P群、ddAC→P+G群はTAC群と比べ、グレード3、4の感覚運動性ニューロパチー、アレルギー反応、ALT上昇、発疹の発現頻度が有意に高かった。

 さらに、貧血の発現頻度についてもddAC療法を選択している2群において高かった。ヘモグロビングレード2(10.0ー8.0g/dL未満)の占める割合を見ると、TAC群は12%だったのに対し、ddAC→P群が24%、ddAC→P+G群では31%と有意に多かった。血栓症・塞栓症のグレードによる有意な違いは3群間で見られなかった。

 加えて、探索的にエリスロポエチンと予後の関係について検討した結果、エリスロポエチン使用の有無によってDFS、OSに有意な差は確認されなかった。エリスロポエチン使用率は、TAC群が35%、ddAC→P群が47%、ddAC→P+G群が51%。輸血実施割合は、TAC群が4%だったのに対し、ddAC→P群が6%、ddAC→P+G群が9%となり、TAC群と両群間との間に有意差が見られた。

 これらの結果からSwain氏は、「AC療法後のパクリタキセルにゲムシタビンを追加しても予後を改善しなかったほか、AC療法後にパクリタキセルを投与した場合とTAC療法との間に有意な有効性の違いは見られなかった」と語った。また、探索的な検討結果から、エリスロポエチンの使用の有無は予後に影響を与えなかったとした。