抗ヒトPD-1モノクローナル抗体(BMS-936558)のフェーズ1試験の結果から、前治療歴のある非小細胞肺癌、メラノーマ、腎細胞癌において、同剤は安全に投与でき、かつ抗腫瘍効果が認められたことが示された。米Johns Hopkins大学のSuzanne Louise Topalian氏が、6月1日から米国Chicagoで開催された第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で発表した。

 PD-1(Programmed cell death 1)受容体は、T細胞上にあってT細胞の活性化を抑制する機能を持っており、自己に対する免疫反応を抑制するなどの機能が明らかにされている。免疫反応が抑制される際には、PD-1受容体にリガンドであるPD-L1が結合することが示されている。

 一方、腫瘍細胞はPD-L1を発現し、PD-1受容体と結合することで免疫反応を抑制し、免疫反応から逃れられることが明らかになってきた。抗PD-1抗体はPD-1受容体に結合することで、腫瘍細胞が発現するPD-L1やPD-L2とPD-1受容体が結合するのを阻害し、その結果として腫瘍細胞への免疫反応が起こることが期待されている。

 今回のフェーズ1試験は、PD-1受容体に対するヒト化抗PD-1抗体であるBMS-936558(MDX-1106/ONO-4538)の安全性と抗腫瘍効果を評価するのが目的。
 
 対象は、前治療(1つから5つの系統的治療)を行ったが進行してしまった、進行性メラノーマ、腎細胞癌(RCC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸直腸癌(CRC)、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)の患者296人。

 BMS-936558 0.1〜10.0mg/kgを2週間おきに静脈注射で投与し、1サイクル8週間として治療した。その後、治療効果判定を行い、進行(PD)もしくは臨床的悪化が認められた場合は試験から外し、許容できない毒性が見られた場合は治療を中止し8週ごとに計48週までフォローアップ。病勢安定以上あるいは病勢進行でも臨床的に安定状態であれば、完全奏効が得られるまであるいは許容できない毒性が見られるまで、あるいは12サイクル(96週)まで治療を継続するという試験デザインとした。

 2008年10月から2012年2月までに296人の患者が登録された。癌種の内訳は、NSCLCが122人、メラノーマが104人、RCCが34人、CRCが19人、CRPCが17人。年齢中央値は63歳。ECOG PSは0が43%、1が53%。患者の47%はすでに3つ以上の前治療歴があった。

 薬剤に関連した有害事象は70%(207人)に見られ、うちグレード3、4の有害事象が見られたのは14%(41人)だった。グレード3、4の有害事象は、疲労が2%(5人)、下痢が1%(3人)、掻痒、吐き気、ヘモグロビン値低下がそれぞれ0.3%(1人)だった。296人のうち、全体の5%(15人)は有害事象により治療を中断した。

 さらに、薬剤関連の有害事象について調べた結果、発疹が最も多く12%で、下痢11%、掻痒が9%と続いた。グレード3、4に限ると、下痢、ALT上昇、AST上昇、肺炎が1%の患者で見られた。肺炎によって3人(NSCLC 2人、CRC 1人)が死亡した。

 腫瘍別に抗腫瘍活性を見ると、メラノーマ(94人)では、客観的奏効率(ORR)28%、SDが24週間以上維持した患者は6%だった。NSCLC(76人)のORRは18%、7%の患者で24週間以上SDが維持された。RCC(33人)は、ORRは27%、24週間以上のSDは27%の患者で確認された。なお、CRCとCRPCでは奏効例は見られなかった。

 探索的な検討として、治療前に生検を行った42人(メラノーマ18人、NSCLC 10人、RCC 5人、CRC 7人、CRPC 2人)においてPD-1リガンド(PD-L1)の発現状態を確認したところ、25人がPD-L1陽性だった。PD-L1陽性患者のうち、9人はCRまたはPR、16人はNR(評価中の2人を含む)となった。一方、PD-L1陰性患者17人は全例がNRとなった。

 Topalian氏はこれらの結果から、「BMS-936558は、前治療歴のある重症のNSCLC、メラノーマ、RCC患者において、外来で安全に投与でき、臨床的効果が十分に認められた」とし、PD-1のシグナル経路が癌治療で重要な役割を果たしていることが明らかになったと語った。また、腫瘍細胞におけるPD-L1の発現は、抗PD-1抗体による治療の効果予測因子として有用である可能性が示されたと指摘。NSCLC、メラノーマ、RCCを対象にしたBMS-936558のさらなる臨床試験を現在計画中であることを明らかにした。