腎細胞癌患者に対する術後補助化学療法としてスニチニブあるいはソラフェニブを投与しても、左室駆出率(LVEF)の低下など心機能の悪化は確認されなかった。米国University of PennsylvaniaのNaomi B. Haas氏らが、6月1日から5日までシカゴで開催されている第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表した。

 チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)投与に伴う心機能不全に関する過去の報告を見ると、その発生率は1〜28%と幅広いが、大半は後ろ向き解析だ。そこで、Haas氏らはECOG 2805試験(Adjuvant Sorafenib or Sunitinib in Unfavorable Renal Cell Carcinoma:ASSURE試験)で心機能に関するサブ解析を行った。この試験は、腎細胞癌患者を対象に術後補助化学療法としてスニチニブ、ソラフェニブ、プラセボを比較したフェーズ3試験だ。

 主要評価項目は6カ月以内におけるLVEFの施設内正常範囲下限値(ILN)を下回る減少、ベースラインから16%以上の減少とした。LVEFの測定はMUGAスキャン(multiple gated acquisition scan)を用いて、ベースライン、3カ月後、6カ月後、12カ月後と治療終了時に各施設で行った。

 無作為に割り付けられた患者1943人のうち、最終的に解析対象としたのは、6カ月後までMUGAスキャンを行えたか、あるいは6カ月以内にイベントが発生した1293人。その内訳は、スニチニブ群が397人、ソラフェニブ群が394人、プラセボ群が502人だった。

 主要評価項目は21人で発生し、各群の発生率はスニチニブ群が2.3%(90%信頼区間:1.2-3.9)、ソラフェニブ群が1.8%(同:0.8-3.3)、プラセボ群が1.0%(同:0.4-2.1)と、いずれの群も低かった。LVEFの低下が確認された時期については、スニチニブ群は3カ月後が6人、4カ月後が2人、6カ月後が1人、ソラフェニブ群は2か月後が1人、3カ月後が1人、6カ月後が5人、プラセボ群は3カ月後が2人、6カ月後が3人だった。なお、21人のLVEFの経時変化を見たところ、一時的に低下しても回復する傾向が見られた。

 患者背景を比較すると、無作為割付けされた1943人と今回の解析対象とした1293人の間で、特に差はなかった。また、主要評価項目のイベントが起きた21人と比べると、再発リスクがとても高い患者や淡明細胞癌、男性、65歳以上、心疾患既往歴がある患者はやや多く、PSが0の患者はやや少なかった。

 他のLVEF関連イベントについては、6カ月後以降におけるベースラインから16%以上の減少がスニチニブ群5人、ソラフェニブ群2人、プラセボ群3人で発生し、グレード2の左室収縮・拡張不全はそれぞれ5人、6人、8人、グレード3はそれぞれ2人、3人、0人で、合計がそれぞれ12人、11人、11人。主要評価項目と他のLVEF関連のイベントを合わせた発生率は、スニチニブ群が4.3%(90%信頼区間:2.8-5.9)、ソラフェニブ群が5.3%(同:2.3-5.2)、プラセボ群が3.7%(同:1.8-4.2)だった。

 心臓関連の有害事象を見ると、グレード3の高血圧がその大半を占め、スニチニブ群(100人)とソラフェニブ群(98人)はともにプラセボ群(24人)より多かった。グレード3〜5の虚血性心イベントはいずれの群も5人だった。

 これらを踏まえHaas氏は、「スニチニブやソラフェニブの投与と心機能不全は有意に関連しておらず、LVEFが低下した患者も回復していることが分かった。また、虚血性心イベントは少なく、両薬との明確な関連は認められなかった」とまとめた。