アロマターゼ阻害剤(AI)による術前補助療法の臨床試験データを用いた乳癌の全ゲノムシーケンスで、luminal乳癌は遺伝的にヘテロジェナイティが大きいが、一部の遺伝子変異は組織型やAI治療効果と関連性があることが明らかになった。米国Washington University Medical CenterのMatthew J. Ellis氏らが、6月1日から米国Chicagoで開催されている第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で発表した。

 ER陽性乳癌の臨床像と体細胞突然変異との関連を調べるためゲノム解析が行われた。対象標本として、ステージII/III、ER陽性乳癌に対し、レトロゾール術前補助療法を行ったPOL試験と、レトロゾールとアナストロゾール、エキセメスタンによる術前補助療法を比較したZ1031試験から得られた77生検標本が使われた。Ki67発現率が10%以上は29例、10%未満は48例だった。

 全ゲノムのある46例では81858の点突然変異や挿入・欠失、773の構造変異体が確認され、1つのゲノムあたり平均で1780変異、1万塩基対あたりおよそ1変異であった。変異はAI感受性腫瘍よりもAI抵抗性腫瘍で有意に多く(p=0.02)、構造変異体の数もAI抵抗性腫瘍で多い傾向があった(p=0.08)。

 また18の重要な変異遺伝子が検出され、このうち5遺伝子(RUNX1、CFBP、MYH9、MLL3、SF3B1)は急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患ですでに認められたものだった。癌抑制遺伝子であるMAP3K1やMAP2K4などでは機能欠失変異が見られた。

 遺伝子変異は組織型やAI治療効果と関連性が見られた。例えばTP53変異ではluminal Aよりluminal Bの人のほうが多く(A:9.3%、B:21.5%)、組織学的グレードが高い人が多い(I:4.5%、II/III:19.2%)。一方、MAP3K1変異はluminal Bよりluminal Aが多く(A:20%、B:6.2%)、組織学的グレードは低い人が多い傾向にある(I:25.8%、II/III:8.8%)。CDH1変異では乳管癌より小葉癌の人が多い(5.9%、50%)。またGATA3変異型では野生型に比べてAI治療後のKi67値が顕著に低下し、GATA3は治療効果を予測する可能性が示唆された。

 パスウエイ解析(PARADIGM)では、AI抵抗性腫瘍におけるキナーゼの活性状態を把握することができ、またTP53変異やRUNX1変異、長鎖ノンコーディングRNAのMALAT1変異などはluminal Bタイプと関連が強いことも示唆された。

 ただしdriver mutationと考えられるようなdruggableな変異や予後因子となる変異は乳癌では少ないことも確認された。