局所進行性または転移を有するHER2陽性乳癌でタキサン、トラスツズマブによる治療歴がある患者に対し、トラスツズマブ-DM1(trastuzumab emtansine:T-DM1)は、カペシタビンとラパチニブの併用療法(XL療法)と比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、忍容性も良好であることがフェーズ3試験(EMILIA)で示された。6月1日から5日にかけてシカゴで開催されている第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で、米Duke Cancer InstituteのKimberly L. Blackwell氏がプレナリーセッションで発表した。

 T-DM1は、トラスツズマブと微小管重合体阻害剤誘導体のDM1を安定したリンカーで結合させた抗体-薬物複合体。
 
 EMILIA試験の対象は、局所進行または転移を有するHER2陽性乳癌(IHC3+、FISH+、または両方)で、トラスツズマブとタキサンによる前治療を受けた患者。患者をT-DM1を投与する群(T-DM1群)またはXL療法を行う群(XL群)に1対1で割付けた。
 
 T-DM1は 3.6mg/kgを静脈内投与で3週毎に投与した。XL療法では、3週間を1サイクルとしてカペシタビン1000mg/m2を経口で1日2回、1日目から14日目まで、ラパチニブ1250mg/日を経口で毎日投与した。投与はいずれも進行(PD)または管理不能な毒性の発現まで継続した。主要評価項目はPFS(独立した審査委員会による判定)、全生存期間(OS)、安全性だった。
 
 2009年2月から2011年10月までに991人が登録された。このうち978人が治療を受け、T-DM1群490人、(年齢中央値53歳)、XL群488人(同53歳)となった。データカットオフ日に治療を継続していた患者はそれぞれ182人と125人だった。
 
 ベースラインの患者背景は両群でほぼ同様だった。内臓への転移は両群とも68%、転移部位数が3個以上の患者はT-DM1群38%、XL群35%だった。エストロゲン受容体(ER)とプロゲステロン受容体(PR)がともに陰性だった患者は、T-DM1群41%、XL群45%だった。前治療では両群ともタキサンが100%、アントラサイクリンが61%、内分泌治療薬が41%に投与され、トラスツズマブは両群で全例に投与されていた。両群ともにトラスツズマブ最終投与からの期間の中央値は1.5カ月、追跡期間中央値はT-DM1群12.9カ月、XL群12.4カ月だった。

 PFSは、T-DM1群9.6カ月、XL群6.4カ月、ハザード比0.650(95%信頼区間:0.55-0.77)となり、T-DM1群で有意に改善した(p<0.0001)。PFSは試験担当医師の判定でも一致した結果で、ハザード比は0.658(同:0.56-0.77)だった(p<0.0001)。サブグループ解析でも、65歳以上を除くすべての群でT-DM1群が良好だった。
 
 OSの中間解析では、T-DM1群は未到達、XLは群23.3カ月、ハザード比0.621(95%信頼区間:0.475-0.813)で良好な結果だった(p=0.0005)が、有効性による早期中止の基準(p=0.0003またはハザード比0.617)には至らなかった。24カ月時の全生存率は、T-DM1群65.4%、XL群47.5%だった。
 
 奏効率は、T-DM1群43.6%、XL群30.8%となった(p=0.0002)。奏効期間中央値は、T-DM1群12.6カ月、XL群6.5カ月だった。
 
 患者報告による臨床症状悪化までの期間(Time to Symptom Outcome:TTSP)は、T-DM1群7.1カ月、XL群4.6カ月で、ハザード比は0.80だった(p=0.0121)。
 
 T-DM1の忍容性は良好で、予測されない安全性の徴候はみられなかった。グレード3以上の血液毒性では、血小板減少と貧血はT-DM1群で多く、好中球減少と発熱性の好中球減少はXL群で多く発現した。T-DM1群とXL群における発現率は、血小板減少が12.8%と0.2%、貧血が2.7%と1.6%、好中球減少が2%と4.3%、発熱性の好中球減少が0%と1%だった。

 グレード3以上の非血液毒性は、AST上昇とALT上昇はT-DM1群で多く、下痢、手足症候群、嘔吐などはXL群で多く発現した。T-DM1群とXL群における発現率は、AST上昇が4.3%と0.8%、ALT上昇が2.9%と1.4%、下痢が1.6%と20.7%、手足症候群が0%と16.4%、嘔吐が0.8%と4.5%だった。

 Blackwell氏は、「T-DM1はHER2陽性で転移を有する乳癌の治療において、重要な治療選択肢になると考えられる」と話した。