プラチナ感受性のハイリスクI期およびII〜IV期の卵巣癌に対するエルロチニブ維持療法は、観察群と比較して無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善しないことが、10カ国125施設で行われたフェーズ3試験によって明らかになった。6月1日から5日にシカゴで開催されている第48回米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、ベルギーUniversity Hospital Leuven and KU LeuvenのIgnace B. Vergote氏らが発表した。

 対象は、国際産科婦人科連合(FIGO)分類でハイリスクI期およびII〜IV期の、上皮性卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌の患者のうち、プラチナ系抗癌剤ベースのレジメンによるファーストライン治療を終了した時点で完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、病勢安定(SD)であった患者835人。ファーストライン治療の終了後6週間以内を対象とした。

 これらの患者を2005年10月から2008年2月まで、エルロチニブ150mg/日を2年間経口投与する維持療法を行った群(エルロチニブ群、420人)と経過観察のみの群(経過観察群、415人)に無作為に割り付けた。

 患者背景は、年齢が両群とも59歳、PSはいずれの群とも0が67%、1が33%だった。原発癌の内訳は、エルロチニブ群が上皮性卵巣癌93%、腹膜癌6%、卵管癌2%、経過観察群が上皮性卵巣癌89%、腹膜癌7%、卵管癌4%だった。FIGO分類(I期/II期/III期/IV期)は順に8%/7%/65%/21%、6%/8%/70%/16%、漿液性がそれぞれ66%と58%だった。ファーストライン治療の抗腫瘍効果に関しては、エルロチニブ群がCRは71%、PRは25%、SDが4%、経過観察群がCRは73%、PRは24%、SDが3%。また、ファーストライン治療は両群ともカルボプラチン+パクリタキセル併用が96%と大半を占めた。

 フォローアップ期間の中央値は51カ月。追跡の結果、治療の中止理由を見てみると、エルロチニブ群は病勢進行(PD)が51%、忍容できない有害事象(皮疹や下痢など)が25%、一方、経過観察群はPDが64%で、エルロチニブ群、経過観察群で予定通り治療を終えたのがそれぞれ19%と33%だった。

 有害事象として、グレード1〜2の下痢が経過観察群では11%だったのに対し、エルロチニブ群では55%と多く、グレード1〜2の皮疹は観察群が2%だったのに対し、エルロチニブ群では66%と多かった。なお、エルロチニブ群においてグレード3〜4の皮疹は13%だった。

 主要評価項目であるRECIST基準によるPFSに関しては、中央値はエルロチニブ群が12.7カ月、経過観察群が12.4カ月で、有意差はなかった(ログランク検定p=0.916)。副次評価項目としたOSについても、中央値がエルロチニブ群は51カ月、経過観察群は59カ月で、有意な差は認められなかった(ログランク検定p=0.603)。

 PFSの延長効果が期待できる因子を特定するため、FIGO分類や年齢(65歳以下と65歳超)で層別解析を行ったが、いずれも2群間で有意差はなかった。

 EGFRに関連する遺伝子変異として、EGFR、KRAS、NRAS、BRAF、PIK3CAの有無を318人(エルロチニブ群160人、経過観察群158人)で解析したところ、エルロチニブ群ではEGFRが1人、KRASが5人、NRASが1人、PIK3CAが6人、経過観察群ではEGFRが2人、KRASが4人、NRASが1人、BRAFが2人、PIK3CAが6人で確認された。

 遺伝子変異のある患者とない患者に分けてPFSを検討した結果、遺伝子変異のあるグループの方が良好なことが分かった(ログランク検定p=0.042)。しかし、エルロチニブ群と経過観察群のそれぞれで変異のあるグループとないグループに分けて、すなわち4つのグループに分けてPFSを検討した結果、有意な差はなかった。

 EGFR遺伝子を免疫組織化学染色(IHC)で調べると、染色陽性が133人中40人(30%)だった。そこで、スコア0と1以上で分けて層別解析したが、有意な差は見られなかった。同様にFISH法で調べると、FISH Lung scoreが陽性(細胞当たり3copies以上存在)は110人中23人(21%)だった。陽性と陰性に分けて層別解析したが、やはり有意な差は認められなかった。

 また、エルロチニブ治療中の皮疹とPFSの間に有意な相関は見られなかった。

 こうした結果からVergote氏は、「プラチナ感受性の卵巣癌において、エルロチニブによる維持療法はPFSを延長せず、またエルロチニブ治療により効果が得られる集団や因子の特定はできなかった。また、エルロチニブ投与群では25%が主に皮疹を原因として治療を中止した」とまとめた。