HER2陽性乳癌に対して、ラパチニブトラスツズマブのみを併用する術前化学療法は高い病理学的完全奏効率が得られることが示された。6月3日から米国シカゴで開催された第47回米国臨床腫瘍学会(ASCO2011)で、Translational Breast Cancer Research Consortiumを代表してJenny Chang氏が発表した。

 これまでの基礎研究において、HER2陽性乳癌に対して、抗体医薬であるトラスツズマブと低分子薬であるラパチニブを併用することはそれぞれの薬剤の単独投与と比べて高い有効性が得られることが示されている。

 こうした背景から、この2剤の併用を用いたさまざまな臨床試験が実施されているが、そのうちの1つがHER2陽性乳癌患者の術前化学療法への利用だ。

 Chang氏らは、HER2陽性乳癌患者の術前化学療法として、ラパチニブとトラスツズマブだけで他の抗癌剤は用いないレジメンの有効性を評価したフェーズ2試験TBCRC 006を実施した。これまでの報告はラパチニブ、トラスツズマブとともに他の抗癌剤も併用した術前化学療法の結果で、今回の発表はラパチニブとトラスツズマブのみの併用について評価している点が新しい。

 対象は腫瘍径3cm以上あるいは2cm以上で腋下リンパ節転移が認められる、ECOG PS 0または1のHER2陽性乳癌患者66例。

 術前12週間に、全例にトラスツズマブ週1回(導入時4mg/kg、以降2mg/kg)とラパチニブ1日1000mgを投与した。ER陽性例についてはレトロゾール、閉経前例にはさらにゴセレリンを投与した。

 病理学的完全奏効率(pCR)は、術前化学療法施行完了後に評価しており、pCRは浸潤性癌がないこと、npCR(near pathological complete response)は1cm未満の残存病変のみがある状態と定義した。

 患者背景は、年齢中央値50歳、腫瘍径の中央値は6cm(1.5〜30cm)で、5cm以上の病変例は39例(62%)だった。閉経前は36例、閉経後は30例。ER陽性は41例(62%)、ER陰性は25例(38%)。プロゲステロン受容体(PR)陽性は29例(44%)、陰性例は31例(47%)だった。ER陽性/PR陽性は29例(48%)、ER陽性/PR陰性は10例(17%)、ER陰性/PR陽性例はなく、ER陰性/PR陰性例は21例(32%)。

 64例がpCRの解析対象となり、pCRは28%。ER陽性グループのpCRは21%(39例中8例)、ER陰性グループのpCRは40%(25例中10例)。pCRとnpCRをあわせた奏効率は53%で、ER陽性グループでは56%、ER陰性グループでは48%だった。

 臨床的奏効率について、全奏効率は75%、完全奏効率は31%、部分奏効率は44%だった。

 有害事象は、治療中断例は5例(8%)、グレード1〜2では、下痢が66%、吐き気が31%、皮疹が46%、グレード3から4は肝障害が3例(5%未満)に見られたのみだった。

 これらの結果からChang氏は、「ラパチニブとトラスツズマブの併用は高い臨床的奏効率を示し、また高い病理学的完全奏効率を示した。エストロゲン枯渇患者に対する2剤併用によるHER2の阻害は有効である」と締めくくった。