anaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子を有するALK陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するALK阻害剤crizotinibの投与は、同じくALK陽性進行NSCLC患者であるがcrizotinibを投与されなかったヒストリカルコントロール(過去のデータに基づく対照患者)と比べて、全生存期間を有意に延長させることが明らかになった。6月3日から米国シカゴで開催された第47回米国臨床腫瘍学会(ASCO2011)で、米Massachusetts General Hospital Cancer CenterのAlice.T.Shaw氏が発表した。

 ALK陽性NSCLC患者に対するcrizotinibの投与は、これまでに実施された臨床試験で奏効率及び無増悪生存率の高さが示されており、これらの患者に対する有望な治療薬として期待されている。

 その一方で、crizotinibに関する臨床試験は、ALK陽性NSCLC患者に対するセカンドライン治療としてのcrizotinibの有効性を評価するために現在進められている国際共同フェーズ3試験もクロスオーバーデザインであるため、crizotinibを用いない標準治療との比較データが乏しいという問題点が指摘されている。

 こうした背景から、Shaw氏らは今回、crizotinibの拡大フェーズ1試験参加施設でセカンドライン治療を受けたがcrizotinibは投与されなかったALK陽性進行NSCLC患者(ALK対照)と、ALK陰性/EGFR野生型の進行NSCLC患者(野生型対照)の両者をヒストリカルコントロールとして採用して、crizotinibの拡大フェーズ1試験におけるALK陽性進行NSCLC患者の生存アウトカムと比較検討した。

 その結果、セカンドラインまたはサードライン治療としてcrizotinibを投与したALK陽性進行NSCLC患者30人(ALK-crizotinib群)の全生存期間中央値が未達、1年全生存率が70%、2年全生存率55%であったのに対し、ALK対照23人ではそれぞれ6カ月、44%、12%、野生型対照125人における値はそれぞれ11カ月、47%、32%であった。

 全生存に関してALK-crizotinib群とALK対照群を比較したハザード比は0.36、p=0.004、ALK対照と野生型対照をあわせてALK-crizotinib群と比較した場合のハザード比は0.49、p=0.02であり、いずれもALK-crizotinib群が有意に優れていた。

 一方、全生存に関するALK対照群と野生型対照群の比較はハザード比1.42、p=0.18であり、ALK対照群の方が不良な傾向が見られたが、ALK陽性は有意な予後予測因子ではなかった。ALK対照群と野生型対照群の患者背景の比較では、年齢中央値(それぞれ51歳、64歳:p<0.001)、非喫煙者の割合(24%、63%:p<0.001)に有意差が認められた。非喫煙者/少量喫煙者の腺癌患者に限定した両群の比較では、ALK対照群の全生存期間中央値が20カ月、1年全生存率72%、2年全生存率35%、野生型対照群ではそれぞれ19カ月、67%、39%(ハザード比 0.93、p=0.79)であり、両群の差はほとんど認められなかった。

 Shaw氏は、今回の検討は無作為化試験でなく、crizotinib投与後の治療内容が交絡要因となる恐れがあり、患者数が少ないといった限界があることを指摘した上で、「ALK陽性の進行NSCLC患者に対するcrizotinibの投与は、crizotinibを投与しなかった臨床的に同等な患者と比較して全生存期間を有意に延長することが確かめられた。ALK陽性それ自体は特に優れた予後予測因子でないものの、このタイプの患者に対するcrizotinib投与は新たな標準治療になると考えられる」と結論した。