転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)患者に、ゲムシタビン(G)とカルボプラチン(C)に加えてイニパリブ(iniparib)を投与すると生存利益が得られることを示唆したフェーズ2試験の結果を受けて行われた、同様の無作為化フェーズ3試験 BSI-201は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)の両方について有意な延長を示せなかった。米Baylor Charles A. Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏が、結果の詳細をASCO2011で6月6日に報告した。

 乳癌の15%はTNBC(ER陰性、PR陰性、HER2の過剰発現無し)だ。それらの患者の転帰は一般に不良だが、TNBC患者はヘテロな集団であると見なされている。

 先に行われた無作為化フェーズ2では、mTNBCに対する治療に、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)を阻害するイニパリブを追加したところ、GとCの毒性を強めることなく、OSとPFSの延長、臨床的有効率と奏効率の上昇が見られた。この試験の結果は、O’Shaughnessy氏らによってNEJM誌2011年1月20日号に報告されている。

 オープンラベルの無作為化フェーズ3は、イニパリブを追加する治療の有効性と安全性を確認する目的で行われた。

 2009年7月から2010年3月まで、mTNBCで測定可能病変を有し、過去に1種類または2種類の化学療法レジメンが適用されていた18歳以上の患者を登録。無作為にG/Cのみ(258人、年齢の中央値は54歳)、またはG/C+イニパリブ(261人、53歳)に割り付けた。G(1000mg/m2を静注)とC(AUC 2を静注)は21日サイクルで1日目と8日目に投与し、イニパリブ(5.6mg/kgを静注)も21日サイクルで1日目、4日目、8日目、11日目に投与した。

 G/C群の患者に進行が見られた場合には、イニパリブを追加することを許可した。

 OSとPFSをコ・プライマリエンドポイントとし、これらのいずれかにおいて有意な延長が見られればエンドポイント達成と見なすとした。多重検定となるため、タイプIエラーの増大を抑制すべく有意水準の0.05を分割し、OSについては0.04、PFSについては0.01に設定した。2次エンドポイントは奏効率、安全性などに設定。分析はintention-to-treatで行った。

 カプランマイヤー法を用いて分析した結果はOS、PFSともに有意差を示さなかった。OSの中央値は、G/C群が11.1カ月(95%信頼区間 9.5-12.1)、イニパリブ追加群が11.8カ月(同 10.6-12.9)で、ハザード比は0.88(0.69-1.12)(ログランク検定 p=0.28)。PFSの中央値は、G/C群が4.1カ月(3.1-4.5)、イニパリブ群が5.1カ月(4.2-5.8)で、ハザード比は0.79(0.55-0.98)(p=0.027)となり、設定してあった有意性の基準は満たされなかった。

 奏効率(CR+PR)はG/C群が30%、イニパリブ追加群は34%、臨床的有効率(CR+PR+6カ月超のSD)は36%と41%だった。

 登録前に何通りの化学療法を受けたかに基づいて患者を層別化した。57%が化学療法歴を持たず、43%が1種類または2種類の化学療法を受けていた。

 化学療法歴無し、すなわちこの臨床試験で投与された薬剤が第一選択になった患者と、第2選択または第3選択となった患者を分けて、OS、PFSについて分析したところ、後者のOSとPFSはイニパリブ群のほうが良好であることが示唆された。

 Cox比例ハザードモデルを用いてベースラインの患者特性で多変量調整したハザード比を求めた。OSのハザード比は、ITT分析対象集団では0.78(χ2検定 p=0.05)、第1選択として治療を受けた患者群では0.83(p=0.32)、第2選択または第3選択として治療を受けた患者群では0.71(p=0.05)となった。PFSのハザード比は、ITT分析集団では0.74(p=0.004)、第1選択集団では0.80(p=0.117)、第2選択または第3選択集団では0.71(p=0.031)だった。

 G/C群の59%がいずれかの時点でイニパリブの投与を受けていたが、クロスオーバーが行われる前の集団を対象に有害事象の分析を実施したところ、両群間に有意差は無かった。グレード3/4の有害事象の中で最も多かったのは好中球減少症(G/C群53%、イニパリブ追加群61%)、貧血(22%と18%)、血小板減少症(24%と28%)など。死亡は希で、治療関連死亡の可能性があるのはイニパリブ併用群の1例のみだった。

 安全性は示されたが、主要エンドポイントは達成されなかった。得られたデータは、第2選択または第3選択としてはG/Cへのイニパリブ追加が有効である可能性を示した。研究者たちは、ヘテロな集団であるmTNBC患者の中からイニパリブに反応する人々を選出するためのバイオマーカの探索を進めている。