全脳放射線照射WBR)前のHER2陽性乳癌脳転移例に対して、ラパチニブカペシタビン併用投与は高い奏効率が得られることが示された。6月3日から米国シカゴで開催されている第47回米国臨床腫瘍学会(ASCO2011)で、フランスCentre Leon BerardのThomas Bachelot氏が発表した。

 HER2陽性乳癌の脳転移の発症率は30〜40%で、生命予後と強く相関することから、その管理が重要となる。複数の脳転移が見られる場合は、WBR以外に有効な選択肢がないのが現状だ。ラパチニブとカペシタビンの併用は、WBR後に進行してしまった患者に対して有効であることが示されており、縮小率は20%で、進行までの期間中央値は3.65カ月であることが報告されている。

 こうした背景を受け、HER2陽性乳癌で脳転移がある患者で、WBRを受けていない症例を対象に、ラパチニブ+カペシタビン併用の効果を評価するLANDSCAPE試験が実施された。

 本試験の主要評価項目はステロイドの増量や神経症状の進行、他臓器転移巣の進行がない状態で脳転移巣の50%以上の体積縮小で定義した客観的奏効率とし、副次評価項目は進行までの期間、安全性、WBRまでの期間、登録時および21日目の循環血液中腫瘍細胞(CTC)の予後予測能の評価とした。

 試験に登録されたのは、直径1cm以上の新たに診断されたHER2陽性乳癌脳転移で、脳外科手術適応外の症例。WBR、ラパチニブ、カペシタビン以外であれば脳転移に対する何らかの治療を受けていてもよく、ECOG PSは0〜2の患者とした。

 ラパチニブは1日1250mg経口投与で、カペシタビンは1日2000mg/m2を14日間投与の3週サイクルで実施した。臨床評価は3週ごとに行い、脳および全身のCTは6週ごとに行った。

 2009年4月から2010年8月までに45例が登録され、うち43例が主要評価項目の評価対象とされた。追跡期間n中央値は14.1カ月(2.2〜20カ月)だった。

 登録時の45例の患者背景は、年齢中央値56歳、60歳以上は26例(57.8%)、ECOG PSは0、1、2がそれぞれ38.6%、56.8%、4.5%。ホルモン受容体はERまたはPR陽性が50%、残り50%はいずれの受容体も陰性だった。脳転移巣数は中央値3カ所で、1カ所の例は13.3%、脳転移以外の転移巣は肝転移例が48.9%、肺転移例が35.6%、3カ所以上転移を有する症例が31.1%だった。トラスツズマブ治療歴は、アジュバントとしての使用が25%、転移に対する使用が68.9%、使用歴なしが6.7%だった。

 追跡の結果、客観的奏効率は、67.4%(95%信頼区間 52-81)で、80%以上縮小したのは9例(20.9%)、50〜80%縮小したのは20例(46.5%)だった。20〜50%縮小した症例は6例(14%)、0〜20%縮小したのは2例(4.7%)、多臓器の進行も含め、進行した症例は6例だった。神経症状の改善が得られたのは58.3%(95%信頼区間 36.6-77.9)だった。

 進行までの期間中央値は5.5カ月で、最初に進行してしまった臓器が脳だったのは32例(73.4%)、脳以外が3例(7%)、同時だったのが5例(11.6%)。解析時にWBRを受けていたのは32例(74.4%)で、WBRまでの期間の中央値は7.8カ月(95%信頼区間 5.4-9.1)だった。6カ月生存率は90.9%(95%信頼区間 77.4-96.5)だった。

 有害事象については、下痢、手足症候群、倦怠感、吐き気などが高頻度に見られたが、グレード3/4は最も多かった下痢、手足症候群が20%で、有害事象により治療中断が必要だったのは3例だった。

 循環血液中腫瘍細胞(CTC)解析では、登録時(41例)に7.5mL中に1個以上認められた症例は20例、5個以上は9例で、21日目(38例)では1個以上が7例、5個以上が3例だった。登録時CTC数別の進行までの期間は、CTC 0個の場合が6カ月、1個以上の場合は4.3カ月だった(p=0.14)。

 これらの結果からBachelot氏は、「新たに診断されたHER2陽性乳癌脳転移に対してラパチニブ・カペシタビンの併用は高い奏効率が得られた。今後、さらにフェーズ3試験などで評価していきたい」と語った。