KRAS野生型の切除不能大腸癌に対する第一選択薬にセツキシマブを追加すると、有意な臨床利益が得られる。では、KRAS変異型患者はおしなべてセツキシマブに反応しないのか。ベルギーGasthuisberg大学などの研究者たちは、KRASがG13D変異型の患者は、セツキシマブ追加によって利益を得られる可能性を示した。同大学のSabineTejpar氏が2011年6月4日にASCO2011で報告した。

 KRASのコドン12または13に変異が認められる切除不能大腸癌患者はセツキシマブの適用外と見なされるが、著者らは以下の3点を根拠として、すべての患者を適用外とすることに疑問を持った。コドン13の変異は、大腸癌患者には高頻度に見られるが、セツキシマブが適用になる他の癌の患者には少ない。In vitroでの形質転換活性はコドン12の変異よりコドン13の変異のほうが小さい。In vitro実験で、コドン12の変異であるG12Vを有する細胞株はセツキシマブ非感受性を示し、コドン13の変異であるG13Dを有する細胞株はセツキシマブ感受性を示す。

 そこで、KRAS変異の状態が無増悪生存期間や全生存期間に及ぼす影響を調べるために、2件の無作為化フェーズ3試験CRYSTALとOPUSの個々の患者のデータをプール解析した。

 CRYSTALは標準化学療法としてFOLFIRIを、OPUSはFOLFOX4を用いていた。どちらも標準化学療法にセツキシマブを追加した場合の有意な利益を示したが、患者をKRAS野生型と変異型に分けて分析すると、セツキシマブによる臨床利益は野生型の患者にのみ見られたと報告されている。

 2件の試験を合わせると、化学療法群は689人、化学療法+セツキシマブ群も689人で、KRAS野生型患者は447人が化学療法のみ、398人がセツキシマブ併用に、G13D変異型の患者は41人が化学療法のみ、42人がセツキシマブ併用に、それ以外のKRAS変異型の患者は、201人が化学療法のみ、249人がセツキシマブ併用に割り付けられていた。G12V変異型患者は53人が化学療法のみの投与を受け、72人はセツキシマブを併用されていた。

 化学療法のみが適用された患者を対象に、これらの遺伝子型の予後への影響をカプランマイヤー法を用いて分析したところ、野生型、G12V変異型、その他の変異型の患者の無増悪生存期間と全生存期間はほぼ同様だったが、G13D変異型のみ、どちらの評価指標においても転帰不良傾向を示した。

 次に、各遺伝子型の患者において、化学療法のみと化学療法+セツキシマブのどちらの効果が高いかを比較したところ、野生型では無増悪生存期間も全生存期間もセツキシマブ併用群の方が有意に長く、G13D変異型患者もセツキシマブを併用したほうが長い傾向を示したが、化学療法のみ群との差は有意にはならなかった。一方、G12V変異型とその他の変異型の患者では、化学療法のみの方が転帰は良好だった。従って、G13D以外の変異型の患者にセツキシマブを併用しても利益は得られないと考えられた。奏効率に関する比較でも結果は同様だった。

 KRAS G13D変異型とその他の変異型のエンドポイントに対する影響を比較したところ全て有意差を示し、無増悪生存期間(P<0.0001)、全生存期間(P=0.0219)、奏効率(P<0.0001)となった。

 得られた結果は、G13Dを有する患者は野生型の患者と同様にセツキシマブ追加により利益を得られること、絶対利益は野生型より小さいが、G13D変異型は野生型ほど化学療法に反応しないため、セツキシマブ追加によって上乗せされる利益、すなわち相対的な利益は野生株と同レベルであることを示した。一方、G13D以外の変異型の患者にはセツキシマブの利益は期待できないことが示された。