70歳以上の高齢の早期乳癌患者では、乳房温存術後の放射線治療を省略してホルモン療法を行っても、ホルモン療法単独と10年後の生存率や遠隔転移の発生率は変わらないことが明らかになった。6月4日から8日までシカゴで開催された第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で、米ボストンのMassachusetts General HospitalのKevin S.Hughes氏が発表した。

 リンパ節転移のないステージ1の早期乳癌においては、乳房温存術を受けた場合には、その後放射線治療を受けるのが標準治療になっている。ただし、進行が遅く再発リスクが低いことが予想される高齢患者にとっても同じ治療が適しているのかどうかは、明らかではなかった。

 研究グループは、1994〜99年に、70歳以上で乳房温存術を受けた早期乳癌患者636人(エストロゲン受容体(ER)陽性、リンパ節転移なし、腫瘍径2cm以下)を対象に、5年間のタモキシフェン単独療法(Tam)群319人とタモキシフェンと放射線療法併用(Tam+RT)群317人の2群に無作為に分け、その後の経過を比較した。

 同グループは以前、観察期間中央値7.9年の結果を発表しており、当時は、Tam群がTam+RT群と比較してわずかに再発リスクを高めることを報告。今回は観察期間中央値12年の長期予後について検討した。

 主要評価項目は、局所再発率、再発による乳房全摘術の実施率、遠隔転移の出現率、そして、乳癌特異的生存率、全死亡率とし、すべて観察期間10年間で評価した。

 同側乳房への再発リスクは、Tam群が9%(27人)だったのに対し、Tam+RT群は2%(6人)と低かった(p=0.0001)。

 ただし、再発によって最終的に乳房全摘術を行ったケースは、Tam群では4%(10人)だったのに対しTam+RT群では2%(4人)で、両群で差はなかった。(p=0.1779)両群の生存率についても差はなく、10年間の乳癌特異的生存率は、Tam群98%、Tam+RT群97%(p=0.4115)、全生存率は両群とも67%だった。

 さらに、遠隔転移の発生率(Tam群5%、Tam+RT群5%、p=0.451)や新たな第2の癌の発生率(9%、12%、p=0.7258)も、両群で変わらなかった。

 観察期間中央値12年の間に、49%の患者が死亡しており、乳癌による死亡は3%だった。

 「この結果から、319人が放射線治療を受けることで、21人の再発を防げるということになる。わずかにメリットはあったものの、生存率などその他の項目については両群で差はなく、高齢者の早期乳癌で乳房温存率の後に放射線治療を受けることのメリットは小さい」とHughes氏。「放射線治療の省略は、我々の研究の範囲では、理にかなった治療の選択肢だ」と結論づけた。