フェーズ3 EMBRACE試験の最終分析結果は、E7389eribulin mesylate)が、治療歴のある転移性乳癌の患者の全生存期間を延長できる初めての薬剤であることを示した。詳細は、英St. James大学病院のChris. Twelves氏により第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で報告された。

 積極的な治療を経験した転移性乳癌の患者には、標準治療と呼べるものは無く、適用できる既存の治療薬の多くは奏効率が低いうえに、全生存期間の延長は望めない。

 E7389は、クロイソカイメンから単離されたハリコンドリンBの合成誘導体で、タキサン系薬剤とは異なる機序により微小管の伸長を阻害し、細胞周期を停止させる。

 Twelves氏らは、日常診療に用いられるレジメンとE7389の全生存期間に対する影響を、局所再発または転移性の乳癌患者を対象に比較する国際的なオープンラベルの無作為化フェーズ3試験を実施した。

 対象は、アントラサイクリンとタキサンを含む2から5通りの化学療法を受けており、うち2種以上が進行癌に対するレジメンで、直近の治療から6カ月以内に進行を見た、ECOG PSが2以下の患者とした。

 762人(年齢の中央値は55.2歳)を登録、無作為に2対1でE7389(508人)または担当医が選択する治療(TPC、254人)に割り付けた。

 E7389群には、1.4mg/m2E7389を1日目と8日目に2-5分かけて静脈内ボーラス投与する治療を21日サイクルで行った。

 対照群にTPCを適用したのはこの種の患者に対する標準治療がないためで、あらゆる単剤治療(化学療法薬、ホルモン療法薬、生物製剤)または支持療法のみのいずれかから主治医が最適と考えたものを実施するとした。

 主要エンドポイントは全生存期間に設定。2次エンドポイントは客観的奏効率、無増悪生存期間などとし、安全性と忍容性も評価した。分析はintention-to-treatで行った。

 今回報告されたのは、422人が死亡した2009年5月12日までに得られたデータを対象とする最終分析の結果だ。生存データの追跡は現在も進行中である。

 対象となった患者は、16%がHER2陽性、19%がトリプルネガティブで、73%がカペシタビン投与歴を有し、中央値4回の化学療法を経験していた。

 TPC群に用いられていたのは、ビノレルビン(61人に投与)、ゲムシタビン(46人)、カペシタビン(44人)、タキサン(38人)、アントラサイクリン(24人)、その他の化学療法薬(25人)、ホルモン療法薬(9人)で、96%に化学療法が適用されていた。

 全生存期間の中央値は、E7389群が13.12カ月、TPC群が10.35カ月。層別化ログランク検定の調整ハザード比は0.81(95%信頼区間 0.66-0.99、p=0.041)で、生存期間の差は2.47カ月だった。1年生存率はE7389群53.9%、TPC群43.7%となった。

 無増悪生存期間の中央値は、独立した評価委員会がRECIST基準に基づいて行った分析では、E7389群が3.7カ月、TPC群が2.2カ月で、ハザード比は0.87(95%信頼区間 0.71-1.05、p=0.14)となった。研究者自身の分析では、それぞれ3.6カ月と2.2カ月、ハザード比は0.78(同 0.64-0.90、p=0.002)だった。ハザード比がほぼ同様であるのに、前者の分析で有意差を示せなかった理由として、Twelves氏は、放射線画像により評価できない患者が打ち切り例となったことなどをあげている。

 客観的奏効率(完全奏効+部分奏効)は、評価委員会の分析ではE7389群が12.2%、TPC群が4.7%(p=0.002)。臨床利益率(完全奏効+部分奏効+病態安定)はそれぞれ22.6%と16.8%だった。研究者による分析でも、客観的奏効率は13.2%と7.8%(p=0.028)、臨床利益率は27.8%と201%で、評価委員会によるものとほぼ同様の結果が得られた。

 あらゆる有害事象はE7389群の98.8%、TPC群の93.1%が経験した。重症有害事象はそれぞれ25%と25.9%に見られた。有害事象による治療中止は13.3%と15.4%だった。治療関連の致死的有害事象は1%と0.8%に発生。TPC群に用いられた治療がさまざまであったことから有害事象発生率の比較は容易ではないと考えられたが、上記の発生率はいずれも両群間で同等だった。

 グレード3/4の有害事象のうち、無力/疲労、好中球減少症、発熱性好中球減少症、末梢神経障害などはE7389群に多く見られた。

 Twelves氏は、有害事象も管理可能なレベルであることから、E7389は進行した患者に対する新たな治療の選択肢になるだろうと述べた。