放射性医薬品のラジウム-223塩化物が、ホルモン療法耐性前立腺癌の骨転移に対して安全に投与でき、プラセボ群と比較して予後を改善することが分かった。6月4日から8日までシカゴで開催された第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で、スウェーデンKarolinska Uniiversity HospitalのS Nillson氏が、同薬剤の安全性と有効性を検証するフェーズ1/2試験の結果を発表した。

 ホルモン療法耐性前立腺癌の骨転移には、骨痛の軽減や病的骨折予防を主な目的に治療が行われているケースが多い。放射性医薬品のラジウム-223塩化物は、有効成分の塩化ラジウム-223が骨転移した腫瘍細胞に選択的に集まり、アルファ線を放出することで抗腫瘍効果を発揮する新しい機序の薬剤だ。周辺組織の被爆は低く抑えられる特徴を持つ。

 本試験はラジウム-223塩化物の安全性、有効性(PSA値、骨のアルカリフォスファターゼ、痛み、生存率)を評価し、放射線量測定を行った。

 対象はホルモン療法耐性前立腺癌で骨転移を有する292人。2つの非盲検フェーズ1試験(37人)と3つの二重盲検フェーズ2試験(222人)の計5試験を実施。フェーズ2試験では、2つの用量設定試験と1つのプラセボ対照試験(ラジウム-223群33人、プラセボ群31人)を行った。

 ラジウム-223は、各試験とも5〜250kBq/kgの投与量で管理し、一回投与か複数回投与とした。

 ラジウム-223は、血中投与後速やかに血中から排出され、骨や小腸に吸収されることが確認された。血中投与後4時間で、血中には4%(2−6%)しか残っていなかった。また、糞便からの排泄が主な排泄経路で、腎臓や肝臓など他の臓器への吸収は最小限だった。

 プラセボ対照試験(ラジウム-223を4×50kBq/kgまたはプラセボを4週間間隔で投与)においては、ラジウム-223群で全生存期間を4.5カ月延長することができた(65週間vs46週間、ハザード比2.10、95%信頼区間 1.14−3.88、p=0.017)。PSAやALPの値が改善し、骨痛の軽減もみられた。

 一方、5つのフェーズ1/2試験の登録患者292人から高頻度で報告された有害事象は、消化器症状(吐き気33%、嘔吐20%、下痢26%、便秘21%)、骨痛(30%)、倦怠感(26%)、貧血(24%)だった。重篤な有害事象は34%(98/292)で報告されたが、その主なものは、骨痛(5%)、貧血(4%)、脊髄圧迫(3%)、癌の増悪(2.7%)だった。

 血液毒性については多くは軽度で、重篤な毒性の発生率は低かった。292人のうちグレード3の貧血を経験したのは4.8%で、血小板や好中球、白血球のグレード3以上の毒性の出現率はそれぞれ3%に満たなかった。

 Nilsson氏は、「今回の対象者を最大3年間フォローアップしている。長期的な毒性評価や急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血といったものの出現がないかも注意しているが、今のところこういったケースは1例もいない」と話す。
 
 この結果を受けて現在、症候性のホルモン療法耐性前立腺癌の骨転移治療を目的に、国際共同無作為化フェーズ3試験(ALSYMPCA)が進行中だ。ただし、日本は環境が整っていないため参加していない。