臨床的にリンパ節転移がない乳癌患者におけるセンチネルリンパ節生検の有用性を検証した大規模無作為化フェーズ3試験、NSABP B-32の最終結果では、センチネルリンパ節生検で陰性を確認した後、腋下リンパ節郭清を実施する群と実施しない群で、長期予後に差がないことが明らかになった。6月4〜8日までシカゴで開催された第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で米University of VermontのDavid N Krag氏が発表した。

 現在、センチネルリンパ節生検は、臨床的にリンパ節転移がない浸潤性乳癌患者に対して国内外で多く行われている。センチネルリンパ節転移が陰性ならば、術中に腋下リンパ節郭清を省略しているケースは多く、ASCOのガイドラインでも標準治療とされている。だが、その長期予後については明らかになっておらず、NSABP B-32の結果が注目されていた。

 同試験は、臨床的にリンパ節転移がない乳癌患者を対象とし、2004年2月までに5611人の患者を登録(生存率の差が2%なら検出できる規模)。センチネルリンパ節生検を行い、結果にかかわらず腋下リンパ節郭清を実施する群(SN+AD群)と、センチネルリンパ節生検を行って結果が陽性なら腋下リンパ節郭清を実施、陰性なら省略してそのままフォローアップする群(SN群)に無作為に割り付けた。

 登録者5611人のうち、センチネルリンパ節転移陰性だった3989人(71%)を分析対象とした。SN+AD群では1975人、SN群では2011人。両群で年齢や人種、腫瘍径、治療方針などに有意差はなかった。

 フォローアップ期間中央値は95カ月だった。主要評価項目である全生存率は、SN+AD群とSN群で差がなかった(ハザード比1.2、p=0.117。)。5年生存率は、SN+AD群で96.4%、SN群は95.0%、8年生存率はそれぞれ91.8%、90.3%とほとんど差がなかった。

 また、無病生存期間においてはさらに差がなく、ハザード比は1.05(p=O.542)。5年間の無病生存率は、SN+AD群で89.0%、SN群は88.6%、8年間ではそれぞれ82.4%、81.5%だった。

 初回の局所再発については、SN+AD群で54人が局所に、2人が腋下に再発しており、一方SN群では、局所49人、腋下8人で、両群に差はなかった。

 また、フォローアップ終了時の後遺症の発生率についても比較した。肩の外転障害(SN+AD群19%、SN群13%)、腕の太さの違い(28%、17%)、腕の感覚障害(31%、8%)などは、いずれもSN+AD群で高かった(すべてp<0.001)。
 QOLについて検討したサブスタディ(n=789)からは、同側の腕と乳房の症状、仕事や社会活動の制限、QOLの障害は、いずれもSN+AD群の患者で多く発生していたことも分かった。
 
 この試験結果に関し、ディスカサントとして登壇したEmory UniversityのWilliam C Wood氏は、同試験を両群でバランスが取れた質の高い研究だと高く評価した上で、「臨床的にリンパ節転移のない乳癌患者においては、センチネルリンパ節転移陰性の場合の腋下リンパ節郭清の実施は、利益をもたらさないという有益なエビデンスが提供された」と締めくくった。