anaplastic lymphoma kinase (ALK) 融合遺伝子を有する非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象としたALK阻害剤PF-02341066(crizotinib)の推奨用量による拡大試験で、奏効率と病勢コントロール率(DCR)において良好な結果が示された。6月4日から8日までシカゴで開催された第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で、韓国Seoul National University College of MedicineのYung-Jue Bang氏が発表した。

 EML4-ALK 融合遺伝子は、細胞内骨格タンパク質をコードするechinoderm microtubule associated protein-like 4(EML4)遺伝子と、受容体型チロシンキナーゼをコードするALK遺伝子が染色体転座により融合した特殊な遺伝子である。NSCLC患者の約4%にこの遺伝子が存在し、これらの患者では上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に対する反応が乏しい。

 このALK 融合遺伝子を肺胞上皮で特異的に発現するトランスジェニックマウスでは強力な癌化能があり、同遺伝子陽性肺癌の主な発癌原因であること、ALK阻害剤の投与により多くのマウスで癌が消失したことが確認されている。
 
 ALK阻害剤PF-02341066(crizotinib)はc-MET(HGFR)とALKの受容体チロシンキナーゼの双方を阻害する経口剤で、NSCLC細胞のアポトーシスを誘導する。

 増量法によるフェーズ1試験で、PF-02341066の推奨用量は250mgの1日2回投与とされている。血中濃度のピークは投与後4時間で、半減期は推奨用量においては53時間以下であり、CYP3A4を阻害する作用があることも示された。

 Bang氏らは、ALK融合遺伝子を有するNSCLC患者82人(平均年齢51歳)を対象として、フェーズ1試験で決定した推奨用量による拡大試験を行った。患者の79人(96%)が腺癌で、34人(41%)が3回以上の前治療を受けていた。非喫煙者と前喫煙者は81人(99%)だった。

 PF-02341066は推奨用量を投与し、奏効はRECIST基準を用いて8週ごとに評価した。8週時に奏効を示した患者の割合に基づき、DCRを決定した。
 
 その結果、客観的奏効率は57%、8週時の完全奏効(CR)と部分奏効(PR)と安定(SD)を合わせたDCRは87%となった。無増悪生存期間(PFS)の中央値にはまだ到達していない。PFSは追跡期間の中央値で6.4カ月、6カ月時のPFSの確率は72%とみられた。

 PF-02341066の忍容性も良好と考えられる結果だった。グレード3の有害事象は、ALT上昇4人(5%)、AST上昇5人(6%)、リンパ球減少症2人(2%)などだった。悪心や嘔吐、下痢などの消化管症状や視力障害が多く観察されたが、いずれも軽度から中等度であった。

 Bang氏は、「ALK融合遺伝子陽性のNSCLC患者にとって、PF-02341066は新しい標準治療となる可能性がある」と話した。

 PF-02341066の国際的なフェーズ3試験も開始された。白金系抗癌剤ベースの治療が無効となったNSCLCでALK融合遺伝子を有する患者を対象として、PF-02341066を投与する群と標準的な化学療法(ペメトレキセドまたはドセタキセル)を行う群に無作為化割り付けが行われている。標準的な化学療法を行って進行した場合、PF-02341066を投与する群に移行できる。