DNA損傷の認識と修復に重要な役割を果たすpoly(ADP-ribose)polymerase(PARP)1および2に対する新しい経口阻害剤ABT-888(veliparib)とアルキル化剤temozolomideの併用は、転移性乳癌で活性が認められ、忍容性は良好で、有望な治療である可能性がフェーズ2試験の結果から示された。また同試験では、BCRA遺伝子変異の有無が有効性に影響する可能性も示唆された。 6月4日から8日までシカゴで開催されている第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO2010)で、米Massachusetts General Hospital Cancer CenterのS. J. Isakoff氏が発表した。

 ABT-888とアルキル化剤のtemozolomideは相乗作用を示すことが乳癌の異種移植モデルで示されている。temozolomideは単剤では、塩基除去修復経路とDNA修復酵素の一つであるO6-methylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)による強力なメチル化DNAの結合により、乳癌における活性は低い。

 Isakoff氏らは、ABT-888とtemozolomideの併用により転移性乳癌で活性が認められると考え、単群のフェーズ2試験を行って検証した。

 対象は、2009年11月4日から12月28日に登録された、測定可能な転移性乳癌で、前治療を1回以上受けた患者41人(年齢中央値51歳)。トリプルネガティブ乳癌は23人、HER2陽性乳癌3人、ER陽性/HER2陰性乳癌は15人だった。脳転移治療後で安定している患者7人(17%)も対象に含まれた。BRCA1遺伝子変異は3人、BRCA2遺伝子変異は5人に認められた。

 ABT-888(40mg、1日2回、day1〜7に投与)とtemozolomide(150mg/m2、1日1回、day1〜5)は経口で、28日を1サイクルとして投与した。評価はRECIST基準を用いて2サイクルごとに行った。

 試験の主要評価項目は奏効率、副次的評価項目は無増悪生存率(PFS)、全生存率(OS)、臨床的有効率(CBR)、安全性、毒性、BRCA遺伝子解析とした。

 41人の対象全体では、完全奏効(CR)1人、部分奏効(PR)2人で、奏効率は7%だった。16週以上の安定(SD)4人(10%)、臨床的有効率(CBR)7人(17%)だった。

 BCR遺伝子変異の有無でみると、BRCA1/2遺伝子変異キャリアでは、CR1人、PR2人で奏効率は37.5%であり、CBRは 5人(62.5%)だった。

 一方、同遺伝子変異がない、または不明の患者では、SD 2人(6%)、進行(PD)31人(94%)となった。

 全体のPFSは中央値1.9カ月だった。BRCA1/2遺伝子変異キャリアと同遺伝子変異がない患者のPFSは、中央値が5.5カ月と1.8カ月で有意差を認めた(p=0.0042)。

 グレード3または4の毒性で多く発現したのは、血小板減少症と好中球減少症で、毒性のため治療を中止した例はなかった。用量の調整で管理可能であり、忍容性は良好だった。

 本試験に基づき、BRCA遺伝子変異キャリアにおけるABT888とtemozolomideの併用について、詳細な評価が計画されている。また、全例の完全なBRCA遺伝子変異の解析が現在進行中である。