局所進行性または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害剤エルロチニブとc-Met阻害剤ARQ 197の併用は、エルロチニブ単剤よりも生存改善効果が上回ることが報告された。6月4日から8日までシカゴで開催されている第46回米国臨床腫瘍学会(ASCO 2010)で、米University of Texas Southwestern Medical CenterのJ. H. Schiller氏が発表した。

 ARQ 197は、肝細胞増殖因子HGFの受容体であるc-Metを選択的に阻害する経口分子標的薬。米ArQule社が開発を進めている。c-Metは癌細胞の移動、浸潤、増殖を制御するほか、EGFRキナーゼ阻害剤に耐性のあるNSCLC細胞で増加していることが分かっている。このため、EGFRキナーゼ阻害剤とARQ 197の併用は、EGFRキナーゼ阻害剤に対する耐性を防いで癌の治療効果を上げるのに有効と期待されている。

 今回の成績は、エルロチニブとARQ 197の併用に関する国際的な無作為化プラセボ対照二重盲検フェーズ2試験の結果だ。

 対象は、前治療としてEGFRキナーゼ阻害剤以外の化学療法薬による治療を1レジメン以上受けたことのある、手術不能な局所進行性または転移性の非小細胞肺癌(ステージIIIB/IV)の患者。これをエルロチニブ+ARQ 197群とエルロチニブ+プラセボ群のいずれかに割り付け、28日を1サイクルとする投薬を行い、2008年10月から2009年9月までの11カ月間の経過を比較検討した。登録患者数はそれぞれ84人と83人、投薬期間の中央値は101日と65日だった。

 主要評価項目とした無増悪生存期間(PFS)は、エルロチニブ+ARQ 197群の16.1週に対してエルロチニブ+プラセボ群は9.7週であり、ARQ 197併用群の方が長かったが、有意差はみられなかった(ハザード比0.81、95%信頼区間 0.57-1.15、p=0.24)。しかし、両群の患者背景にはNSCLCの組織型や遺伝子型といった予後因子の構成比に差があり、予後因子に関して調整した多変量コックス回帰モデルを用いた検討では、PFSのハザード比は0.68(95%信頼区間 0.47-0.98、p<0.05)とARQ 197併用群で有意な改善が認められた。

 副次評価項目とした全生存期間(OS)は、エルロチニブ+ARQ 197群が36.6週、エルロチニブ+プラセボ群が29.4週とARQ 197併用群が長かったが、予後因子に関する調整後も有意差はみられなかった(調整後のハザード比0.88、95%信頼区間 0.6-1.3、p<0.05)。

 一方、組織型別のサブグループ分析では、非扁平上皮癌の患者でARQ 197併用による改善が特に著しく、PFS、OSともに有意に改善した(それぞれ9.2週と13.7週の延長)。遺伝子型に関しては、EGFR遺伝子が野生型の患者や、KRASに突然変異がある患者で、PFSの改善効果が特に高いことが分かった。

 主な有害事象は、皮疹(エルロチニブ+ARQ 197群64%/エルロチニブ+プラセボ群52%)、下痢(48%/53%)、疲労感(33%/37%)、悪心(26%/26%)、貧血(14%/13%)だったが、発生頻度に関して両群間に大きな差はなかった。

 以上の結果からSchiller氏は、エルロチニブとARQ 197の併用は、局所進行性または転移性のNSCLCに対するセカンドライン以降の治療法として、効果、忍容性、安全性のいずれの点も優れており、非扁平上皮癌、EGFRが野生型、KRASが変異型の患者で特に効果が期待されると結論した。