スイスKantonsspital St. GallenのJ. Huober氏

 HER2陽性・HR陽性の局所進行・転移性乳癌に対して、アロマターゼ阻害剤レトロゾールと分子標的薬トラスツズマブを併用する一次治療は、安全に投与でき、レトロゾール単剤よりも優れた臨床効果のあることが多施設共同のeLEcTRA試験で明らかになった。スイスKantonsspital St. GallenのJ. Huober氏(写真)が、12月9日から13日まで米サンアントニオで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウムSABCS 2009)で発表した。

 試験には、2003年から2007年に7カ国32施設から、HER2陽性もしくは陰性で、ホルモン受容体陽性(HR;エストロゲン受容体陽性および/あるいはプロゲステロン受容体陽性)の局所進行・転移性乳癌患者92人が登録された。HER2陽性・HR陽性の患者がレトロゾール単剤群(31人、A群)とレトロゾールとトラスツズマブ併用群(26人、B群)に割り付けられ、HER2陰性・HR陽性の患者にはレトロゾール単剤を投与した(35人、C群)。

 A群の年齢中央値は61歳(47〜88歳)、B群は61.5歳(39〜87歳)、C群は70歳(45〜81歳)だった。それぞれ、局所進行は29%、46%、43%、骨転移は61%、58%、57%、軟部組織の転移は36%、31%、23%、肺転移は13%、15%、26%で、肝転移は39%、19%、23%だった。

 試験の結果、増悪までの期間(TTP)中央値は、A群が3.3カ月、B群が14.1カ月で、A群に対するハザード比は0.67(p=0.23)、C群は15.2カ月でハザード比は0.71(p=0.03)となった。

 クリニカルベネフィット率(完全奏効、部分奏効、6カ月以上を超える病勢安定)はA群が39%、B群は65%(オッズ比;2.99、95%信頼区間;1.01-8.84、p=0.0636)、C群は77%(オッズ比;5.34、95%信頼区間;1.83-15.58、p=0.0024)で、奏効率はA群が13%、B群27%、C群11%となった。また奏効期間は、それぞれ12.2カ月、11.4カ月、16.5カ月だった。

 トラスツズマブには稀ではあるが、心機能障害の副作用が報告されている。本試験では、左室駆出率(LVEF)はA群とC群では変化がなく、B群においては5%の減少が見られたが、「心機能には影響はない」とHuober氏は話した。消化管の毒性はそれぞれ32.3%、57.7%、11.5%であり、筋骨格系および結合組織の障害は38.7%、57.7%、40%と、B群で多い傾向が見られた。

 以上の結果から、「レトロゾールとトラスツズマブの併用は安全に投与でき、HER2陽性・HR陽性の乳癌において、レトロゾール単剤よりも優れている」とした。前臨床試験では、HER2とHRのシグナル経路におけるクロストークがホルモン療法に対する抵抗性に関与するといわれており、今回の試験の結果から、「大半のHR陽性、HER2陽性の乳癌患者にはホルモン治療単独では十分でない可能性がある」とも述べた。