静岡県立総合病院乳腺外科の中上和彦氏

 HER2陽性の転移性乳癌の初回治療として、トラスツズマブドセタキセルの併用投与は、トラスツズマブ単独投与後にトラスツズマブとドセタキセルを併用投与する場合に比べ、無増悪生存期間と全生存期間を有意に延長させることが、日本の無作為化フェーズ3臨床試験で明らかになった。静岡県立総合病院乳腺外科の中上和彦氏(写真)らが12月12日、サンアントニオ乳癌シンポジウムのポスターセッションで発表した。

 試験は、HER2陽性の転移性乳癌で、ECOG PSが0または1、左室駆出率(LVEF)50%以上の患者107人を対象とし、病気の進行までトラスツズマブを単独投与し、その後、順次的にドセタキセルとトラスツズマブを併用投与する群(順次投与群)と、トラスツズマブとドセタキセルを最初から同時併用投与する群(併用投与群)を比較した。

 主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)とし、順次投与群のPFSはトラスツズマブ単独投与における最初の進行あるいは死亡までの期間とした。

 PFS中央値は、順次投与群(トラスツズマブ単独)では3.7カ月であるのに対し、併用投与群は14.6カ月と有意に延長した(ハザード比:4.24、p<0.0001)。OSは50%生存期間の算出まで至っていないが、死亡数は順次投与群が13人、併用投与群は6人と有意に順次投与群に多かった(ハザード比:2.72、p=0.0352)。

 副次評価項目である奏効率は、併用投与群で67.9%、順次投与群ではトラツズマブ単独で14.8%だったが、併用後は47.2%となった。また順次投与群全体のPFS中央値は12.4カ月で、併用群のPFS中央値は14.6カ月だった。

 主なグレード3/4の有害事象は両群とも好中球減少と白血球減少だった。有害事象により投与を中止した患者は順次投与群で10.9%、併用投与群では15.1%と多かった。

 これらの結果から、HER2陽性の転移性乳癌の初回治療として、トラスツズマブとドセタキセルの併用が有用であることが示されたが、中上氏は「これは評価可能病変のある患者(骨転移のみ等は対象外であった)に対する初回治療における結果であり、それ以外の患者、例えば腫瘍径の極端に小さい病変などではトラツズマブ単独から開始することも考慮すべきだろう」と話した。