浜松オンコロジーセンターの渡辺亨氏

 リンパ節転移のある乳癌にはアントラサイクリン系抗癌剤の投与に続き、タキサン系抗癌剤の投与が勧められている。しかし、最初からタキサン系抗癌剤のみの投与でも、無増悪生存期間に大きな違いのないことが、日本のフェーズ3臨床試験「NSASBC02」の中間解析で明らかになった。浜松オンコロジーセンターの渡辺亨氏(写真)ら12月13日、サンアントニオ乳癌シンポジウムのポスターセッションで発表した。

 試験は、病期1〜3A期で、リンパ節転移陽性の乳癌患者を対象に、以下の4群に無作為に割り付けた。まず、AC療法(ドキソルビシン60mg/m2、シクロホスファミド600mg/m2)を3週置きに4回、続いてパクリタキセル(175mg/m2) を3週置きに4回投与する群(ACP群)、次にAC療法は同様の投与スケジュールで行い、その後、ドセタキセル(75mg/m2) を3週置きに4回投与する群(ACD群)、3週置きにパクリタキセル(175mg/m2)だけを8回投与する群(PTX群)、3週置きにドセタキセル(75mg/m2)だけを8回投与する群(DTX群)とした。

 2001年12月から2006年4月で84施設1060人が登録され、試験を完遂したのは902人だった。

 まず、研究グループは、「タキサン系抗癌剤による治療は、アントラサイクリン系抗癌剤を含む治療に対して非劣性を示す」という仮説をたて、それを証明するために、無病生存期間(DFS)を主要評価項目とし、アントラサイクリン系抗癌剤を含む群(ACP+ACD)とタキサン系抗癌剤のみの群(PTX+DTX)で比較した。

 その結果、DFSに有意な違いは認められず(ハザード比は1.26、99%信頼区間0.92‐1.72、p=0.67)、この仮説は証明された。

 しかし、HER2ステータスで分けると、HER2陽性ではアントラサイクリン系抗癌剤を含む群の方が優れていたが(ハザード比は1.63、95%信頼区間1.05‐2.54)、HER2陰性では統計的な違いは見られなかった(同1.13、95%信頼区間0.85‐1.50)。

 次に、パクリタキセルを含む群(ACP+PTX)とドセタキセルを含む群(ACD+DTX)で比較したところ、パクリタキセルを含む群に比べ、ドセタキセルを含む群でDFSに19%の改善が見られた(ハザード比は0.81、95%信頼区間0.64‐1.03、p=0.08)。

 グレード3/4の有害事象は、PTX群で最も少なかったが、神経障害はDTX群(4%)に比べてPTX群(6%)の方が多かった。DTX群で浮腫が11%に見られた。発熱性好中球減少はドセタキセルを含む群で頻度が高く、ACD群が11%、DTX群が8%だった。

 今回の試験では、リンパ節転移陽性の乳癌患者で、3週置きのドセタキセル投与は、3週置きのパクリタキセル投与よりも無増悪生存期間を改善することが明らかになった。渡辺氏は、「同じタキサン系抗癌剤でも、ドセタキセルとパクリタキセルは似て非なるもの。3週置きの投与スケジュールでは、このような結果が得られたが、現在はパクリタキセルの毎週投与が主流であり、パクリタキセル毎週投与との比較では結果が異なる可能性もある」と話した。