九大循環器内科の久保満樹氏

 スタチンナノ粒子を使って虚血部位に投与することで血管新生効果が期待できる可能性が報告された。九大循環器内科の久保満樹氏(写真)らは11月30日、虚血モデルマウスにおいて、スタチンを封入したナノ粒子の局所投与によって虚血肢の血流回復が増強しangiogenesisとarteriogenesisの増加が確認されたことを、第15回日本血管生物医学会・学術集会のポスターセッションで発表した。

 これまでに、スタチンの全身投与によって、末梢血中の血管内皮前駆細胞が増えること、傷害血管の再内皮化が促進されること、虚血組織の血管新生が促進されること――などが動物実験で報告されている。スタチンによってRhoキナーゼ、eNOSと順に活性化されていくことで再内皮化が促進されるという作用機序が考えられている。

 ただし、これらマウス下肢虚血モデルを使った再内皮化の動物実験は、皮下注や経口で1〜5mg/kg/日と高用量のスタチンが全身投与でかつ連日投与された結果だった。高用量のスタチンは、横紋筋融解症など、副作用のリスクがあることを考えると臨床応用するのは難しいと予想される。そこで、久保氏らは、生体吸収性素材で作製したナノ粒子を使って局所投与することで、スタチンの効果が得られる一方、副作用は回避できると考えた。

 久保氏らは、乳酸とグリコール酸を共重合させた径200nmのPLGA製ナノ粒子にスタチンを封入した粒子を作製。細胞実験で、ヒト臍帯静脈内皮細胞やヒト骨格筋細胞に効率よく取り込まれること、内皮細胞のtube formationを促進することを確認した。

 次に、マウス下肢虚血モデルを作製し、作製時に筋注にて下肢の4カ所にスタチン封入ナノ粒子を投与した。スタチン投与量はピタバスタチン約0.4mg/kgに相当する。その結果、マウス下肢で血管新生作用が得られ、血流の改善が確認された。何も治療しなかった場合やスタチンを含まないナノ粒子や直接スタチンを筋注した場合と比較して有意に高い効果が得られた。直接スタチンを筋注する場合では、スタチン濃度を高めても同じ効果は得られなかった。

 なお、スタチンの全身投与時に起こる末梢血中の血管内皮前駆細胞の増加は、局所投与時には起こらなかった。これらのことから、血管新生効果は局所作用が主であると考えている。

 今後、大動物を使った試験を行い、同様の効果が得られるかどうかを確認し、臨床段階へ進めていく予定だ。