九大循環器内科准教授の江頭健輔氏

 生体吸収性の高分子ポリマーをコーティングした難燃性マグネシウム製ステントを使えば、現在の薬剤溶出ステントDES)の問題点を解決するステントにできる――。九大循環器内科准教授の江頭健輔氏(写真)は11月29日、第15回日本血管生物医学会・学術集会のプレナリーセッションで発表し、現在臨床現場で使われているDESの臨床成績と問題点を指摘し、江頭氏が開発中のDESを紹介した。

 現在のDESは、従来のベアメタルステント(BMS)と比べて再狭窄率を劇的に低減させたが、ステント内血栓による急性心筋梗塞や突然死が増加し、米食品医薬品局(FDA)は認可外使用に対して警告を出し、適正な使用を推奨するにいたっている。

 江頭氏は、DESの問題点として、DESに搭載されている薬剤によって内皮細胞再生の抑制などによる副作用があるほか、生体非適合性/非吸収性のポリマーが使われていること、ステンレス製のステントが体内に永久に残存してしまうことを指摘した。

 そして、現行のDESを使用するには、(1)既にDESが使用された症例については、アスピリンなどの抗血栓薬を最低12カ月以上、場合によっては長期間併用すること、(2)今後、DESを使う際には、患者が歯科治療、外傷、外科手術で抗血小板薬を中止せざるを得ないことを説明する必要があること、(3)再狭窄を繰り返す症例であればDESの適応があるが、低リスク症例ではBMSで十分であることなどを挙げた。

 こういった問題を解決するために江頭氏らが開発を進めているのが、生体吸収性の高分子ポリマーと生体吸収性材料を使ったステントだ。

 生体吸収性の高分子ポリマーとは、ポリ乳酸とポリグリコール酸を共重合させたPLGAを材料として、ナノメートルサイズの粒子(径200nm)にするもの。これまでの実験で、ウサギ頚動脈をバルーンで傷害した部位に、蛍光色素のFITCを封入したナノ粒子を投与したところ、直ちに傷害部位に導入されることや、ヒト冠動脈平滑筋細胞へ高い効率で導入されることなどを確認した。

 ナノ粒子をステントにコーティングする方法も、ナノ粒子をキトサンで包埋することで金属ステントの表面にコーティングする技術も開発した。PLGAの分子量を変えることで細胞内の滞留時間を制御できると考えている。

 このナノ粒子によってステントに搭載する薬剤は、抗炎症作用を持つNF-κBデコイなど遺伝子プラスミドやたんぱく質、内皮再生に関わる血管新生因子やスタチン、抗血栓薬のシロスタゾール、分子標的薬のイマチニブなどを検討している。

 ステントの材料については、マグネシウムとカルシウムを組み合わせることを検討中だ。両金属とも生体必須元素で、生体吸収性が期待できるからだ。実は、これまでにマグネシウムのみで作製したステントについては、ヒトでの臨床試験が行われた経緯がある。しかし、吸収が早すぎたため開発が中断している(Lancet 2007;369;1869-1875)

 マグネシウムに加えるカルシウムの含量を変えることで生体吸収時間を変えられるため、必要な期間血管を広げるステントとして血管内に存在し、最終的には分解するステントにできると期待している。

 現在、江頭氏らは、生体吸収性ポリマーや生体分解性ステントについて、マウスなどで実験を進めているところだ。