大阪警察病院心臓センター部長の上田恭敬氏

 血管内視鏡で薬剤溶出ステントDES)を留置した部位を観察すると、新生内膜で覆われていない部位が存在する症例が約50%であることが分かった。留置部に新生内膜で覆われない部位があることで、血栓症発症リスクが高くなる可能性が示唆された。大阪警察病院心臓センター部長の上田恭敬氏(写真)が11月29日、第15回日本血管生物医学会・学術集会のプレナリーセッションで発表した。

 これは、上田氏らが約30症例を対象に、血管内視鏡で観察した結果、明らかになったもの。現在までに100症例ほど観察しているが、同様に約50%の症例でDES留置部位に一部でも新生内膜が覆われていない部位がありそうだという。

 上田氏らは、従来から使われているベアメタルステント(BMS)留置患者の留置部位を血管内視鏡で観察した結果から、急性冠症候群や安定狭心症では、ステントを留置する病変に血栓源性の高い黄色プラークが存在すること、BMS留置後には白色平滑な新生内膜がステントを被覆し、その結果黄色プラークも被覆されて血栓源性が非常に低くなることが明らかになっている。

 国内のDESに使われているのは免疫抑制剤であるシロリムスで、このシロリムスが平滑筋細胞の増殖を抑制することで血管の再狭窄率が低下するというのがDESの原理だ。海外では、シロリムス以外に、抗癌剤であるパクリタキセルを使ったDESもあり、同じく平滑筋細胞の増殖を抑制することで再狭窄率を低下させる。

 一方、一般的にステント留置後、留置部位には新生内膜が形成されるが、この新生内膜がステントや黄色プラークを被覆することでステント留置部の抗血栓能が高まっていく。上田氏らが、DES留置部位を血管内視鏡で観察した結果、ステントの露出の割合は、BMS留置後6カ月で8%だったのに対し、DES留置後6カ月では露出度は46%と非常に高く、DES留置後12カ月でも露出度は20%だった。血栓形成率も、BMSの6カ月が8%だったのに対し、DESの6カ月で42%、DESの12カ月でも20%だった。

 これらの結果から、上田氏は、DES留置後ステントは新生内膜によって被覆されないか、非常に薄い膜でしか覆われておらず、ステント留置部にある黄色プラークが被覆されるほどの新生内膜が形成されることはまれであると指摘した。最近、海外での大規模試験の結果、DES留置後1年以降にステント血栓症が発生する率が有意に高いことが明らかにされてきた(Joner M et al. J Am Coll Cardiol 2006;48:113-202)。これらステント血栓症発症の背景には、ステントに塗布した薬剤が、平滑筋細胞の増殖抑制以外に内皮細胞を含む新生内膜の形成も阻害していることが理由の1つとしてあるといえそうだ。

 上田氏は、「ステント留置部にある黄色プラークが綺麗に覆われるかどうかが血栓症のリスクファクターとして最も重要ではないかと考えている」と指摘した。