倉敷中央病院臨床研究センター臨床研究センターの井上勝美氏

 薬剤溶出ステントDES)は、有害事象の1つとして血管の中膜壊死を生じることがこのほど報告された。中膜壊死が生じると血管の弾力性が失われ、ステントの圧着不良も生じやすくなり、血栓症の発症リスクも高まるという。倉敷中央病院臨床研究センター臨床研究センターの井上勝美氏(写真)が11月29日、第15回日本血管生物医学会・学術集会のプレナリーセッションで発表した。

 井上氏は、DESによる治療を受けた患者の剖検から、冠動脈血管の平滑筋細胞が脱落する、いわゆる中膜壊死が生じる症例があることを見い出した。中膜壊死が生じると、血管の弾性力が失われ、「伸びきったゴムのようになってしまう」(井上氏)という。その結果、ステントの圧着不良が生じやすくなる。「圧着不良は血栓を生じやすいため、中膜壊死はステント血栓症の独立した危険因子となるだろう」と井上氏は語った。

 また井上氏は、中膜壊死が生じた症例の解析から、「中膜壊死は、血管中膜にステントが密着するように挿入された場合に生じやすいようだ」と分析する。

 「DESは『Longer is better』と言われ、長めのステントを挿入することが推奨されているが、長めのステントを挿入するとどうしても中膜に密着しやすくなる。中膜壊死のリスクを考えると、この『longer is better』は再考する必要があるだろう」と警笛を鳴らす。

 加えて、井上氏は、DES治療後、内視鏡で観察した場合では、血管内に正常な新生内膜が生じているように見える症例でも、病理組織的解析では、正常な新生内膜は生じておらず、炎症細胞などが多く集積していることも発表した。

 これらの結果から「現在実用化されているDESは、血管内皮の再構築を良い点も悪い点もすべて力で押さえ込む作用がある。すなわち、再狭窄に関連する炎症も抑制されるが、血管壁の正常な修復反応も抑制されている。今後は、血管内皮によりマイルドに作用し、血管壁の正常な修復は抑制しない次世代DESが求められる」と語っていた。