左から葛谷雅文氏、ファーストオーサーの中村香江氏、佐々木健氏

 アテロームプラーク破綻のモデルマウスを用いた研究により、アンジオテンシンII受容体拮抗薬のオルメサルタンは好中球の作用を抑制することで、プラーク破綻を抑制している可能性が示された。名大医学部循環病態探索医療学の研究グループ(写真)が11月29日、第15回日本血管生物医学会・学術集会のポスターセッションで発表した。

 同グループは、これまでにアポE遺伝子欠損変異マウスを用いたプラーク破綻疾患モデルを作成している。今回は、同モデルマウスを用いて、オルメサルタンによるプラーク破綻抑制のメカニズムを検討した。

 研究では、9週齢アポE欠損変異マウスの左総頸動脈を結窄し、その4週間後に結窄部位にポリエチレン製のチューブ(cuff)を装着し、プラーク破綻疾患モデルマウスを作成。このモデルマウスに対して、オルメサルタン(3mg/kg/日)を、cuff装着3日前から経口投与した。

 その結果、オルメサルタン投与群のプラーク破綻率は、非投与の対照群に比べて約24%低下し、オルメサルタン投与によりプラーク破綻が抑制されることを確認した。また、好中球が分泌するMMP-8が、オルメサルタン投与群で有意に抑制されていたという。

 加えて、好中球の血管内膜内への浸潤を比較したところ、オルメサルタン投与群では対照群に比べて、好中球の浸潤が抑制されていることも組織の免疫染色で確認した。すなわち、オルメサルタン投与により好中球の働きが抑制され、その結果、プラーク破綻が抑制されている可能性が示唆された。

 同グループは、これまでにスタチンを用いて同様の実験を行っている。スタチンを用いた実験では、プラーク破綻の抑制率は35%と、オルメサルタンより高かったという。また、スタチン投与群では、マクロファージが分泌するMMP-9が有意に抑制されることも確認している。すなわち、スタチンはマクロファージの働きを抑制することで、プラーク破綻を抑制している可能性があるという。

 「これまでの結果から、プラーク破綻には、好中球とマクロファージの両者が関与していると考えられる」と、共同研究者でモデルマウスを作成した浜松医大解剖学講座の佐々木健氏は解説する。そのため、今後、両剤を併用し、プラーク破綻の抑制効果がより高まる可能性を検討することが課題という。

 また、「スタチンやオルメサルタンの投与を受けている患者は多く、併用投与を受けている患者も多い」と、同研究を率いた名大医学部循環病態探索医療学準教授の葛谷雅文氏。「そのような患者において、どのような機序でプラーク破綻が抑制されているかを今回の研究は説明するものだろう」と語っていた。