東大循環器内科客員準教授の佐田政隆氏

 薬剤溶出ステントDES)による副作用として問題視されているステント血栓症を、スタチンが抑制する可能性を示唆する研究成果が発表された。東大循環器内科客員準教授の佐田政隆氏(写真)が11月29日、第15回日本血管生物医学会・学術集会のプレナリーセッションで発表した。

 DESは狭窄が生じにくいステントとして、発売とともに全世界に普及し、発売後数年間で約600万人に利用されたといわれている。しかし、その後の解析で、DES治療後の患者において、血栓症の発症リスクが残ることが問題となっている。

 佐田氏は、これまでの発表データや自身の研究成果から、国内でも利用されているDESが溶出する免疫抑制剤シロリムスの血管への作用をとりまとめた。その結果、シロリムスは、血管の正常な再生プロセスである血管内皮細胞の増殖を抑制すること、内皮細胞の増殖抑制が血栓症の発生につながることが分かった。

 そのため、内皮細胞の正常増殖を促進することが血栓症の予防につながると考え、内皮細胞の正常増殖を促進する因子として、スタチンに注目した研究の成果を発表した。

 同氏らは、血管を取り巻くようにシロリムス溶出ジェルを巻き、シロリムス溶出ステントによる治療を模擬したマウスの実験系を作成。このマウスに対して、血管障害後にスタチン(フルバスタチン)を投与し、血管内皮細胞の増殖を調べた。

 その結果、スタチン非投与群では有意に内皮細胞の増殖が抑制されたが、スタチン投与群では、この内皮細胞増殖の抑制が打ち消され、正常の内皮細胞増殖が見られることを確認したという。

 すなわち、シロリムス溶出ステントによる治療時に、スタチン投与を併用することで、血管内皮細胞の正常増殖が促進され、ステント血栓症を予防できる可能性が示されたわけだ。現在、ステント血栓症予防のために広く利用されている抗血小板薬にスタチンを併用することで、血栓症予防効果がより高まる可能性があるといえそうだ。

 「実際、DES治療を受ける患者のなかには、スタチン投与を受けている患者も多い」と佐田氏。今後、患者においてスタチン投与がDESによるステント血栓症予防にどのような影響を与えているかを調べるとともに、スタチンの種類と内皮細胞増殖との関係も調べる必要があるとしている。