九大循環器内科非常勤研究員の岸拓弥氏

 メタボリックシンドローム患者において、血管内皮に機能障害が起こることで血管拡張反応が低下することが最近示唆されているが、新たに交感神経系も関与していることが分かった。九大循環器内科非常勤研究員の岸拓弥氏(写真)らが11月29日、第15回日本血管生物医学会・学術集会のポスターセッションで発表した。メタボリックシンドロームの進展においては、交感神経活動の亢進や動脈圧受容器反射悪化、血管内皮機能異常が関わっており、これらの指標の改善がメタボリックシンドロームの治療につながる可能性があるといえそうだ。

 今回、岸氏らは、メタボリックシンドローム患者における交感神経活動の活発化や動脈圧受容器反射機能異常の程度と血管拡張反応性との関連性を明らかにするために、メタボリックシンドロームの診断基準を満たす10人と対照群10人を比較した。メタボリックシンドローム群のBMIは25.6±1.8(対照群23.4±1.3)、中性脂肪208±33mg/dL(非対照群138±42)、HDLコレステロール38±4md/dL(対照群44±5)、空腹時血糖値115±15mg/dL(対照群89±14)、HbA1c6.0±0.7%(対照群5.4±0.5)、血圧138±13/86±5mmHg(対照群128±9/78±6)、心拍数72±6bpm(対照群68±8)だった。

 血管内皮機能の測定には、プレチスモグラフ法による前腕血流量(FBF)の測定、前腕血管抵抗(FVR)を平均血圧/FBFで算出によって行った。静脈閉塞プレチスモグラフ法によって、心拍による血流の変化を検出し、前腕血流量を測定した。前腕血管抵抗のアセチルコリンによる変化を血管内皮による血管拡張反応とした。

 また、交感神経活動と副交感神経活動については、血圧・心拍数変動周波数解析を行い測定した。具体的には、心拍数は心電図から、血圧は指先トノメトリーで測定した連続血圧を用いて周波数解析を行った。副交感神経活動の指標には心拍変動総周波数パワーから0.03Hz以下を除いた成分における高周波成分の割合を、交感神経活動の指標として収縮期血圧変動総周波数パワーから0.03Hz以下を除いた成分における低周波成分の割合を用いている。

 その結果、メタボリックシンドローム患者群においては、アセチルコリンによる前腕血流量の増加、前腕血管抵抗の低下、反応性充血反応について、それぞれ健常者に比べて悪化していた。なお、血管平滑筋に作用するニトロプルシドを使って同様な試験を行っており、ニトロプルシドによる反応は対照群と同等だった。つまり、血管拡張反応が悪化しており、それは血管内皮の機能悪化が原因といえる。

 一方、交感神経、副交感神経系の評価では、メタボリックシンドローム患者群では交感神経活動の亢進を意味するLFnuSBP(収縮期血圧変動総周波数パワーから0.03Hz以下を除いた成分における0.04-0.15Hzの低周波成分の割合)が56±6%と高かった(コントロール群44±3、p<0.05)。

 反応性充血による最大増加時のFBFとの関係では、アディポネクチン量が相関係数が−0.44(p<0.01)、HOMA-IRの相関係数が0.44(p<0.05)であったほか、LFnuSBPとも有意な相関関係(相関係数=−0.77、p<0.01)にあることが明らかになった。

 これらの結果から、メタボリックシンドロームでは血管内皮を介した血管拡張反応が低下しているほかに、交感神経活動が亢進していることが明らかになった。現在、岸氏らは、これらの指標が治療法の違いでどう改善していくかを調べるための前向きランダム試験を進めている。