市立釧路総合病院泌尿器科の丸晋太郎氏

 腎細胞癌患者における術前の血小板高値症例は、これまで知られている他の予後因子と比較して再発率が高く、生存率が低いことが明らかになった。市立釧路総合病院泌尿器科の丸晋太郎氏が、4月25日から開催された第96回日本泌尿器科学会総会で発表した。

 丸氏は、術前検査で血小板高値であった症例は、今回解析した腎細胞癌患者315例のうち25例、7.9%と少ないものの、高値例は5年非再発率が32%と他の予後因子の非再発率と比べて低く、高値例には注意深い観察が必要であるとした。

 今回、解析したのは、98年から2005年までに帯広厚生病院、市立釧路総合病院で腎全摘除術および腎部分切除術を施行した腎細胞癌患者315例だ。男性225例、女性90例で、年齢は中央値64歳(20〜91歳)、古典的症状がなかったのは214例、あったのは74例、左右差は左が143例、右が172例、術式は全摘除術が251例、部分切除術が64例だった。

 病理学的背景は、進展度がpT1が61.9%、pT2が17.1%、pT3が21%。異型度はG1が19.4%、G2が58.1%、G3が22.5%。静脈浸潤陰性が85.1%、陽性が14.9%。浸潤増殖様式はINFαが79.4%、INFβが19.4%、INFγが1.2%。リンパ節転移はpNxが68.6%、pN0が27.6%、pN1が0%、pN2が3.8%。腫瘍径は70mm未満が77.8%、70mm以上が22.2%。組織型は淡明細胞型が78.4%、他の型が21.6%だった。

 まず最初に各術前検査項目と非再発率について解析した。血小板高値は35万/mm3以上、ALP高値は340IU/L以上、CRP高値は0.5mg/dL以上、Hb低値は11.6g/dL以下、血清TP低値は6.5g/dL以下、血清Cre高値は1.2mg/dL以上、血清Ca高値は9.8mg/dLとした。

 血小板数では血小板正常群の5年非再発率が290例(73.1%)であったのに対し、血小板高値群は25例(32.0%)と有意に低かった(p<0.01)。

 ALP値別の5年非再発率は正常群が72.3%、高値群が55.7%(p<0.01)。CRP値別では正常群が77.8%、高値群が44.8%(p<0.01)。Hb値別では正常群が75.6%、低値群が49.6%(p<0.01)。血清TP値、血清Cre値、血清Ca値は正常群と非正常群で有意差は見られなかった。

 項目別に5年非再発率を比較すると、血小板高値がもっとも非再発率が低いといえる。解析した315例のうち、術前の血小板値が高かった症例は25例、全体の7.9%と低いが、血小板値が高い症例は術後のサーベイランスに注意が必要といえる。

 多変量解析では、血小板高値がハザード比2.375(1.24-4.56、p<0.01)、Hb低値がハザード比1.923(1.14-3.25、p=0.01)で、他の項目は有意ではなかった。

 臨床検査項目や病理学的所見について血小板高値群と正常群の比較を行った結果、ALP高値、CRP高値、Hb低値、有症状、pT3以上、G3、静脈浸潤陽性、浸潤増殖様式INFβ+γ、腫瘍径70mm以上の項目で血小板高値群が有意に症例数が多かった。

 さらに、術前血小板高値症例25例のうち、術後血小板数が追跡可能だった21例(このうち術前に転移がなかった症例は14例)を対象に、術後3カ月で血小板数が正常化した13例(術前転移なし9例)と術後3カ月で高値持続した8例(術前転移なし5例)を比較した。

 その結果、術前転移のない14例について、血小板正常化群9例と血小板高値持続例5例の3年非再発率は、正常化群では77.8%であったのに対し、高値持続群は20.0%(p<0.01)で、血小板高値が続くと再発率が高いことが明らかとなった。転移があった症例も含めた生存率についても、正常化群13例と高値持続群8例を比較した場合、正常化群が70.1%であったのに対し、高値持続群は25.0%と、血小板値が高い状態が続くと予後が悪いことが明らかとなった。

 丸氏は、「血小板高値症例は他の予後因子も高率で併存し、予後が非常に悪い。血小板値は普段の採血で情報が得られるため日常診療でも扱いやすいことを考えれば、有効な予後因子であると考えられる」と語った。