第96回日本泌尿器科学会総会が4月25日から27日までの3日間、横浜市で開催される。前立腺癌患者が増加する一方で、PSA検診の有用性に関して議論がわき起こるなど、今、社会的にも泌尿器科が注目されている。総会の会長を務める西村泰司氏に話をうかがった。


日本医科大学泌尿器科教授の西村泰司氏

――今回の総会の“ウリ”を教えて下さい。

西村 最初に、今回は総会全体のテーマは設定していません。無題です。よい総会となるかどうかは、座長の先生のご尽力と演者の発表そのもので決まると思っているからです。一つひとつの発表に総会の成否を託すという意味です。

 ただ、学会概要・演題募集要項のパンフレットの表紙に「曙富士」を使い、裏表紙には「JUA`08 がんばれ、にっぽん!」と記しました。日本泌尿器科学会、世界に向かってがんばれ!です。泌尿器科医は最近、米国の方ばっかり向いているような気がします。米国が定義を変えれば、ほとんど盲目的にそれが正しいと従うようなところもあります。

 米国は世界に向けてよいこともしていますが、一方で大国のエゴイズムも明らかです。例えばドイツなど他国の論文を無視し、まるで自分たちが最初に発表したように振る舞います。また、泌尿器科疾患の治療法の変遷に見て取れるように、過度に市場原理に迎合しているところも気になります。英語は必要だと思いますが、米国流にあまり振り回されることは良いこととは思えません。

 泌尿器科領域で、日本が世界に誇れるものもあるのです。例えば、複数の熟練医が1本の未編集ビデオを割愛することなく時間をかけてくまなく見て審査する、泌尿器腹腔鏡技術認定制度は世界初のもので、昨年、関西医大の松田教授が米国泌尿器科学会に招待され、メインホールで講演しました。

 総会では、AUA-EAU-JUAのjoint meetingとして、「Method of teaching endourology and qualification system of laparoscopic surgical skill」が開催されます。自分たちの良いところを認識し、良い仕事をすれば、ぺこぺこしなくても向こうから来るんです。また、University of California, San Franciscoの篠原克人教授に、「政治も経済も弱体化したニッポン、世界に勝つ泌尿器科医になるには」と題して講演していただきます。

――今回は外国からの招聘演者の数を、極力抑えたと聞いています。

西村 せっかく呼んでも、話すことは総論ばかりで、あまり意義があるとは思えないんです。また、多くの方にはわかりにくい英語で講演する。私は英語には自信があるのですが、それでもわかりにくいと思う。それなら外国人を呼ぶ費用を削減し、参加費を下げた方がいい。

 運営資金に関しては、かなり工夫しました。まず本当に会長をやるかどうか定かではなかった3年半前に、首都圏にしては安いパシフィコ横浜を、期間も従来より1日短縮して押さえたのが大きい。その他、会長招宴は省きましたし、スライドプロジェクターの費用など、いわゆる学会屋に支払う費用も全て見直しました。

 結果として、参加費も1万円に抑えることができました。しかしプログラムには力を入れているのでご安心下さい。

――それでは、プログラムの中でも特におすすめというものを教えて下さい。

西村 まず、昨年秋に急遽追加したシンポジウム、「日本の前立腺がん検診を考える」ですね。昨年、厚生労働省が、何を考えたか古いデータで結論を出した厚労省研究班を利用してPSAを毎年検査する必要はないと言い出した。PSAが前立腺癌の早期発見、予後の改善に役立っていることは言うまでもありません。

 ただし前立腺癌に関しては、生検の適応、生検の方法、再生検の適応、治療の必要のない癌の見極めなどについてまだ検討が必要で、総会でディスカッションされるはずです。

 それから、「女性医師による育児の実際と今後社会に求める具体案」というシンポジウムも企画しました。女性医師と泌尿器科との結びつきに意外性を感じるかもしれませんが、今や何人かの女性泌尿器科医が各大学にいるのは当然で、私のところにも4人います。

 また、「女性泌尿器科」という言葉が注目されてきており、女性の腹圧性尿失禁、骨盤臓器脱、過活動膀胱、間質性膀胱炎、尿道憩室、瘻孔、子宮癌治療後の排尿障害、女性性器脳障害などを扱うUrogynecologyを目指そうという気運があります。

 シンポジウム「緩和ケアーの実際」も是非聞いて欲しいですね。私は、癌の緩和ケアは診断時に始まっていると思っています。終末期に近づいてから緩和ケアを考えるのは手遅れである。そのあたりの感性を皆さんに受け止めていただきたいですね。