大腸癌の手術後には、腸閉塞(イレウス)の出現が問題となる。以前から、腹腔鏡手術では開腹手術よりもイレウスが減少すると考えられてきたが、多数例の検討から、それが裏付けられた。岩手医科大学外科の中嶋潤氏が、第108回日本外科学会定期学術集会で発表した。

 対象は、1997年1月から2007年12月の間に大腸癌に対して大腸切除を行った1052人。うち開腹手術は541人、腹腔鏡手術は511人だった。同大学外科では、腹腔鏡手術の適応を、周囲臓器への浸潤がなく、腸管狭窄がなく、腫瘍の口側の腸管の状態が明らかで、直腸癌については側方郭清が不要なものとしている。

 開腹手術群と腹腔鏡手術群で、患者背景、手術成績、術後のイレウス発生率を比較検討したところ、患者背景については開腹群で男性332人、女性209人だったのに対し、腹腔鏡群では男性276人、女性235人と有意差があった。手術成績については、平均手術時間が開腹群215.4分、腹腔鏡群188.5分と、腹腔鏡群で有意に短かった(p<0.001)。さらに出血量の平均も、開腹群375.4mLに対し腹腔鏡群47.1mLと、腹腔鏡群が有意に少なかった(p<0.001)。リンパ節郭清範囲は、開腹群でD3郭清を行う症例が多かったが、明らかな差はなかった。

 術後イレウスの発生率は、開腹群44人(8.1%)に対し、腹腔鏡群14人(2.7%)と、腹腔鏡群で有意に低かった(p=0.001)。そこで、腹腔鏡群14人の背景を検討したところ、男性12人、女性2人と性差があったほか、結腸癌5人(1.5%)に対し、直腸癌9人(5.2%)と、直腸癌で高頻度だった。また、イレウス群はイレウスがみられなかった患者に比べ、手術時間が有意に長かった(p<0.001)。

 中嶋氏は、「半数の7人が絶食のみで改善し、追加手術が必要になったのは2人のみだった。今後、イレウスの発生に関して、性差や病変部位の違いがどのように影響しているのか、検討を加えたい」と締めくくった。セッションの司会を務めた東京女子医科大学第二外科教授の亀岡信悟氏は、「非常に見事な成績だが、経験豊富な施設だからこそ、こうした結果が得られたと思われる」と話し、すべての施設で同等の成績が得られるとは言えない点に注意を促した。