岡山大学医学部・歯学部附属病院遺伝子・細胞治療センター副センター長で准教授の藤原俊義氏は、5月16日に長崎市で開催された日本外科学会で、アデノウイルスを利用した抗癌剤であるテロメライシンの米国におけるフェーズ1臨床試験が順調であることを明らかにした。フェーズ1試験の詳細は5月30日からシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表される予定だ。また藤原氏は提携するバイオベンチャーが台湾で肝癌を対象に臨床試験を開始する予定であることも公表した。

 テロメライシンは、ヒトアデノウイルス5型のE1領域にテロメラーゼプロモーターを組み込んだ腫瘍殺傷ウイルス製剤。テロメラーゼ活性が高まっている癌細胞の中で特異的に増殖して癌細胞を殺すが、正常細胞中での増殖能力は弱く、細胞毒性を示さないのが大きな特色。フェーズ1試験は、米Mary Crowly Medical Research Centerで各種固形癌患者の中でも既存の治療法では効果が得られず、他に有効な治療の選択肢のない患者で、悪性黒色腫や表皮に転移が起きた患者などを対象に行われた。

 5月15日にASCOのアブストラクトが公開されたが、それによると、フェーズ1臨床試験はウイルス投与量によって3群(1×10の10乗個、1×10の11乗個、1×10の12乗個)で、各群3人ずつにテロメライシンを単回投与した。その結果、テロメライシンの認容性は高く、報告された副作用はすべてグレード1か2だった。用量制限毒性はなかった。

 抗腫瘍効果は16人中12人の中間解析の結果、すべての患者が28日目で安定状態(SD)を経験していた。28日目までに数人の患者で腫瘍の縮小効果が認められ、腫瘍サイズの中央値は−2.6%、最も縮小したのは-15.5%で、最も増殖したのは9.2%だった。