重粒子線の一つである炭素イオン線を使った治療で、切除不能の後腹膜軟部悪性腫瘍(肉腫)の5年生存率は69%、5年局所制御率は65%に上る――。放射線医学総合研究所重粒子医科学センターの鎌田正氏らが、5月15日から17日に長崎市で開催された日本外科学会で発表した。

 炭素イオン線治療は線量集中性に優れ、細胞を死滅させる生物効果も高いとされる。同センターでは炭素イオン線の安全性と有効性を検討するフェーズ1/2臨床試験およびフェーズ2臨床試験を1994年から行なっている。実施件数は1994年6月から2008年2月までに3819件。このうち骨軟部への治療が398件、10.4%を占めた。

 本発表では軟部肉腫の約15%を占める後腹膜軟部肉腫について、その治療成績が報告された。対象は後腹膜軟部肉腫患者27人で、原発性が18人、再発性が9人だった。腫瘍径は4〜15cm(中央値は10cm)。組織型はMFH(悪性線維性組織球腫)が6人、MPNST(悪性末梢神経鞘腫瘍)が5人、脂肪肉腫が3人、そのほか11人となっていた。

 4週間で16回の照射を行った結果、5年生存率は69%、5年局所制御率は65%であり、「重粒子線治療は主に切除不能あるいは術後再発の後腹膜軟部肉腫症例を対象としているが、局所制御および生存率は切除例の報告と同等であった」と鎌田氏はいう。

 副作用は、急性期にはグレード2の皮膚障害が15%、遅発性の副作用としてはグレード2の皮膚障害が4%、グレード2の末梢神経障害が19%に見られた。

 炭素イオン線はピンポイントの照射が可能だが、その近接した組織への照射はまぬがれない。そこでゴアテックスシートを腹部に挿入することにより、消化管近接への照射も試みられており、「適応の拡大が可能になりつつある」という。